青森県知事、トラックドライバーの残業規制に猛反発 「リンゴが運べず、ミカンに負ける」
地産地消で解決なんて机上の空論
地産地消や、東北他県など近隣への輸送を拡大するという手は考えられませんか。 宮下氏:いや、そんなの絶対無理です。そんな机上の空論で経済は動かない。そもそも商売のルートというのは、何十年もかけて確立されたものがあるわけですよ。 津軽のリンゴは2月ごろに出荷のピークを迎えます。そのときに、大田市場や大阪の中央卸売市場にこれだけ出荷しますとなっている。それが首都圏などのスーパーに並んでいくという話でしょう。仮に地産地消してくださいなんて言ったって、そんな量を消費できるわけがないので。だから、今までのルートをちゃんと確保する物流をしない限り、経済が衰退していくということになります。 最近は、JR東日本の「はこビュン」など鉄道輸送も整い始めています。 宮下氏:いや、それでどれだけリンゴを運んでいるかという話ですよ。青森のリンゴは日本の生産量の6割ぐらいを占めている。確かに地域でも食べてはいますが、その大半は(日本全国の)皆さんの食卓に並んでいる。 どちらかというと、鮮度よりもコストがオンされることが大きいようですね。それによってリンゴの店頭価格が上がるかもしれない。 宮下氏:そうそう。リンゴは国民食ですが、ミカンに勝てなくなってくるかもしれない。 スーパーに行くと必ず、入り口のそばにリンゴがあるわけじゃないですか。リンゴかミカンがあるわけじゃないですか。ミカンの方が100円安ければ、みんなミカンにいくわけでしょ。その勝負をいつもしているのに、この超長距離の物流でコストがプラスアルファになるのは大きい。物流のコストがオンされたら、だいぶ競争力が下がると思いますね。 これから2%ぐらいのマイルドなインフレが続いていくと、おそらく実質賃金も追いついていく好循環に向かっていくと思います。ですが、30年にわたって消費者に染みついたデフレマインドはそう簡単には拭えないでしょう。 だからスーパーの店頭で選ばれるためには、1円でも安いということがすごく大事です。おいしいことも大事ですけど、2024年問題によって価格競争力が落ちてしまうのは、ものすごい理不尽だと思うんですよ。 青森県としてできることはしていきますか。 宮下氏:結局、国を頼りにしていても、あまり話が進まないということはよく分かってきたので、パレットの規格統一とか、物流の拠点をつくることについて、自分たちでできることはやろうと考えています。 私は日本経済の底力とか奥行きの深さというのは、零細企業が支えていると思うんですよ。そういうのがなくなってくると、日本の力強さというのは、経済の力強さというのは、なくなってくると思うのです。労働規制がそれをぶち壊すというのは何とか避けたいですよね。
酒井 大輔