どんなときも「ハッピー☆ブギ」──今週の悲しいストーリーにこそ活きる主題歌、『ブギウギ』制作統括が語る曲に込めた思い
「見てみ。六郎が死んだて書いてある。戦死やて」──。12月5日放送の『ブギウギ』(NHK総合)47話のアバンタイトル(オープニング前の映像)は、梅吉(柳葉敏郎)から六郎(黒崎煌代)の戦死公報を見せられたスズ子(趣里)が愕然とするシーン。そして、主題歌『ハッピー☆ブギ』の賑やかで楽しげなイントロが流れた。 【動画】心が弾む『ハッピー☆ブギ』フルバージョン エネルギーに満ち満ちたスズ子の生き様と対比させるかのように、このドラマには常に死の影が横たわっている。大和礼子(蒼井優)が亡くなったと報された翌日の25話でも、母・ツヤ(水川あさみ)が亡くなった翌日の40話でも、『ハッピー☆ブギ』は明るい音色を奏で続けた。主題歌なんだから当たり前なのだが、誰かが亡くなっても、どんなに悲しくても苦しくても、『ハッピー☆ブギ』は変わることなく流れる。 このカオスが、『ブギウギ』らしい。改めて、『ハッピー☆ブギ』という主題歌に込めた思いを、制作統括・福岡利武さんに訊いた。 ■ スタッフの間で議論になったことも 「狙いとしては、悲しいときも辛いときも、いつでもこの主題歌ですべてを包むというのが『ブギウギ』らしい、といったところでしょうか。それこそが、このドラマのテーマではないかと思っています」と、福岡さんは話す。 「人間、生きていればいろんなことがある。これまでも、これからも、スズ子の人生は波瀾万丈です。そんななかで、いつもどこかに『ハッピー☆ブギ』な感じというのは大事なのではないかなと」と、この朝ドラの持つ多面性に触れた。 しかし、ドラマ本編と主題歌の関係性については、スタッフの間でも一度議論になったという。「たしかに、編集室でも『この回にこの明るい主題歌は、ちょっと違和感があるかも』といった声はあったと思います。でも、その混ぜこぜな感じも含めて『ブギウギ』なんじゃないかなと。うれしいことも辛いこともあるけれど、すべてを混ぜこぜにしたまま、丸呑みしていく感じが、このドラマの面白さなのではないかと思っています」と、持論を語った。 ■「六郎の願いとスズ子の思いが表れている」 また第10週について、「今週は六郎の戦死を受けて、とても辛く悲しい週です。けれど、『ハッピー☆ブギ』こそが、スズ子にずっと笑っていてほしいという六郎の願いと、『六郎、それでもワテは明るく歌うで』というスズ子の思いとが表れているような気がしています」とコメントした。 禍福は糾える縄の如し。「福来スズ子の笑いと涙の物語」はこれからも混ぜこぜなまま、続いていく。 取材・文/佐野華英