出雲の神様の温かさと「おいしい島根」をアンテナショップで再発見!
百貨店や外資系ホテルなどの集まる中央通り沿いに店を構える日本橋・室町エリア。島根県のアンテナショップ「にほんばし島根館」を訪れた。11時の開店から客足が途絶えることはなく、対面販売員の威勢のいい掛け声が響き渡る。 対応してくれたのが当館店員の和田知世さん。島根県出雲市出身で、地元の高校卒業後、東京都内の美容専門学校進学のため上京した。専門学校卒業後、同館の求人募集見た東京在住の叔母の勧めで、パートとして働いている。なつかしい食べ物があり、故郷を感じられる場所が東京にもあると知り、心の支えになっているという。
島根の特産品が全国区でなかったことにショック
上京して、ショックだったのは、ふだん島根で当たり前のように食卓に上っていた「板わかめ」も「あらめ」も「あごの野焼き」も全国区のものではなかったこと。「上京してはじめてそれが島根の特産品であることを知りました」。 「板わかめ」とはわかめを板状に干したもので、軽くあぶってパリパリと手で細かく砕いてごはんにかけて食べるのが定番。おやつや酒のつまみとしても好まれている。「あらめ」は昆布の一種で、見た目や味はひじきに近く、乾燥したもの水で戻して野菜などと一緒に煮つけにして食べる。「あご」とはトビウオのことで「島根県の魚」として1989年に選定された県民にはなじみの深い魚。同県沿岸での漁獲量は全国でも5つの指に入る。そのすり身でつくった焼き蒲鉾が「あごの野焼」だ。
年末年始のお楽しみは「出雲そば」と「出雲地方の雑煮」
学生の頃は長期休暇のたびに帰省していたが、いまは年末年始だけ出雲に帰る和田さん。出雲大社が放つ荘厳な空気は、この時期は格別に感じられるのだろう。「年越しそばには『出雲そば』を食べます。ふつうのそばとは違って、そばの実を丸ごと挽いたそば粉を使うので色が黒くて、香りがいいんです」 「出雲そば」は三段の丸い漆器にそばを盛って出す割り子(わりご)そばが最も一般的で、器に直接、薬味(青ねぎや花かつお、大根おろしなど)をのせ、だし汁をかけて食べるのが出雲流。つるっとしたのど越しをよりも、そば本来の香りとうまみ、しっかりとした歯ごたえが楽しめる。日本三大そばのひとつで、ほかに「戸隠そば」(長野県)、わんこそば」(岩手県)がある。 年越しそばを食べ終わると、「出雲大社はいま、たくさんの初詣客でにぎわっているだろう」と、思いながら和田さんは家族とともに実家で新年を迎える。人出が少し落ち着いた2日頃に初詣に出かけるという。 正月に欠かせないのが雑煮。東西に細長い島根県は地方によって違いがある。野菜をたっぷり入れるところ、小豆を使った甘い汁粉風のものもあるという。 「出雲地方の雑煮はとてもシンプル。しょうゆのすまし汁に煮た丸もちを入れ、乾燥した十六島(うっぷるい)のりを上にかけるだけなんですが、すごくおいしいんです」 トッピングの「十六島のり」とは手摘みされた天然岩のり一種で、極寒の日本海の荒波はじける滑りやすい岩場で「命がけで収穫されている」とテレビで放送されたことがある希少価値の高いもの。香りや食感は格別で正月など特別なときに食べられる。