西野ジャパンはなぜボランチを7人も招集したのか。見えてきたW杯戦術とは
ロシア大会のグループリーグで日本が対戦するコロンビア代表はラダメル・ファルカオ(モナコ)と前回大会得点王のハメス・ロドリゲス(バイエルン)、セネガル代表はサディオ・マネ(リヴァプール)、そしてポーランド代表はロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン)と、いずれもワールドクラスのアタッカーを擁している。 彼らに4バックで対峙すれば、特に2人のセンターバックは相当のストレスを溜め込みながらのプレーを強いられる。一瞬の隙やわずかなミスが失点につながりかねないが、長谷部をカバーリング役にすえた3バックにすれば、吉田麻也(サウサンプトン)や槙野智章(レッズ)らが対人守備の強さを存分に発揮できる好循環が生まれる。 GK以外のポジション表記を外してほしいと、会見の席上でJFA広報に要望した西野監督は、多様性を意味する「ポリバレント」という言葉を何度も用いている。 「ポリバレントな能力を持った選手たちが、このリストの中にもいると思っています。固定したシステムやポジションだけではなく、そういう(ポリバレントな)戦い方、戦術的な柔軟性も出してほしい。選手たちにも、たくさんのオプションを考えて伝えていきたい」 長谷部がボランチだけでなくセンターバックでもプレーするならば、ポジション表記にこだわる必要はない。ただ、3バックを採用しているJクラブの多くが、相手ボールになれば左右のアウトサイドも下げた5バックで対峙している。 青山がプレーするサンフレッチェは森保一監督(現U-21日本代表監督、日本代表コーチ)に率いられた2012、2013、2015シーズンに、守備時には「5‐4‐1」に早変わりして自陣にブロックを構築する「可変システム」でJ1を制覇した。 しかし、同じ戦い方をロシア大会で講じれば相手の猛攻にさらされ、守備網はおのずと破綻する。防戦一方の状況を回避するには、3バックで守りながらも前線からプレスをかける必要がある。そのためには1トップではなく、2トップが理想的な形となる。 シーズンの終盤をけがで欠場した香川と岡崎に関して、西野監督は対照的な言葉を残している。 ブンデスリーガの最終節で約3ヵ月ぶりに復帰した香川には「デリケートに考えなければいけない」と触れながら、岡崎には全幅の信頼を込めてこう語った。 「運動量が多いだけではなく、2つ先、3つ先のプレーに対する貢献度と献身度は絶対にチームに欠かせないと思っていました。1カ月の猶予があれば、間違いなく良い状態に持っていける。そうした想像力を働かせたうえで、選出しました」 指揮官の脳裏には岡崎とブレーメンへの移籍が決まった大迫勇也の2トップで、守勢を攻勢に転じさせる一の矢となる前線からのプレスをかける青写真が描かれているはずだ。執拗に何度でもボールを追える岡崎には、まさにうってつけのタスクとなる。 ならば、3バックと2トップにした際の中盤をどのような形にすればいいのか。2ボランチにトップ下か、あるいはアンカーの前に2人のインサイドハーフを配置するのか。対戦相手の特徴も踏まえながら、青山を加えて厚みを増したボランチ勢のなかからベストの組み合わせの答えを、21日から関東近郊で始まる合宿で模索していくことになる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)