三年連続輸入車SUVナンバーワンの実力やいかに? VWの新型『T-Cross』試乗レポート
VW(フォルクスワーゲン)のコンパクトSUV、『T-Cross(以下Tクロス)』がマイナーチェンジを果たした。『Tクロス』は同ブランドのコンパクトカーであるポロに次ぐボディサイズで、日本の道路事情でも扱いやすいのも魅力。その使い勝手やオシャレな雰囲気が人気を博し、日本ではデビューイヤーである2020年から2022年まで3年連続で輸入SUVカテゴリー登録台数No.1を獲得した実力派モデルだ。そんな『Tクロス』を試乗してみた。 【画像】気になる新型VW『T-Cross』の詳細一覧 ■ベストセラーのコンパクトSUVが進化 垢抜けたコンパクトSUVとして知られるVWの『Tクロス』。2019年に本国デビューし、5年目となる2024年にマイナーチェンジを受けた。大きなトピックは3つ。先進運転支援システムの充実、内外装の質感向上、ボディカラーの新色追加である。 フロントまわりはそれまであったフォグランプが廃され、その位置はメッキで縁取り。リアはコンビネーションランプにX字のパターンでより視認性が向上。加えて左右を結ぶシグネチャーランプは前後に使われ、夜間時でもアクセントとして活躍が期待できそうだ。 グレード体系は最も「らしい」エントリーモデルの「アクティブ」、充実装備の「スタイル」、スポーティ路線の「Rライン」の3つ。今回のマイナーチェンジで全グレードに同一車線内全車速運転支援システム「トラベルアシスト」が標準装備されただけでなく、スタイル以上にはLEDマトリックスヘッドライト「IQライト」、前席シートヒーターが標準装備され、Rラインは専用のエクステリアやシート、18インチホイールなどが装備される。 ■質感が向上したインテリア 今回のマイナーチェンジで車内の質感は大きく向上。それまでのプラスチッキーなダッシュボード付近はソフトパッドが多用され、視覚的にも満足感が高い。センターディスプレイは物理的ボタンを配したタブレットタイプに。 ■見た目だけでなくサウンドも『Tクロス』の美点になりそう。 全モデルに6スピーカーが標準装備なのだが、RラインにはBeatsのプレミアムサウンドシステムがオプション設定。Beatsはアメリカのオーディオメーカーでラッパー&音楽プロデューサーとして活躍するDr.Dreらが2006年に設立したブランド。近年、注目を集めるオーディオブランドのクオリティを導入。目立たない部分だが、車内サウンドにもしっかりとこだわりを投影。 ■動的質感も魅力 試乗車は充実した装備スタイル。しっかりとしたドアノブの感覚からして、VW感が溢れうr。ドライバーズシートに腰を下ろすと格段に質感の向上したダッシュボードが迎えてくれる。走り出してすぐ感じるのは静粛性の高さだ。マイナーチェンジ前のモデルよりも静かに感じる。そして走り出せば足回りの落ち着き感が増しているようだ。乗り心地も全体的にマイルドな印象で、もはや17インチクラスのタイヤでも構える必要はないのだろう。 動的なメカニズムは全グレード共通。すなわち最高出力116PS、最大トルク200Nmを誇る1.0リッターの直列3気筒エンジンを載せ、ミッションは7速DSG、駆動方式はFFのみというものだ。 これはキャリーオーバーと発表されているが、エンジンの振動や音がだいぶ抑え込まれている感がある。またコンパクトSUVとはいえ1.0リッターのパワーユニットでは役不足かとも思ったが、それは違った。街中では十分以上。3000rpmも回せば周囲の交通を余裕でリード可能で、3500rpmを越える辺りからエンジン回転に勢いがつく。これぞターボと思える瞬間で、スポーティな走りもできる。Rラインは未試乗だがこのベクトルがより強くなると推測される。このあたりはオシャレなSUVにどの要素を強く求めるかの好みになるが。 それにしても素直な運転フィーリングはさすがVW。背の高くなりがちなSUVでもそれは変わらない。例えばステアリング操作。交差点などゆっくりと操作すればクルマの姿勢も鷹揚な感じで動いてくれるし、切り返しの続くコーナーでは機敏にクルマが動いてくれる。自分の操作に忠実に動くことは疲労軽減にもつながっている。 加えてブレーキング時の姿勢も安心感がある。『Tクロス』はFFながらも車体全体が沈み込むフィーリングで同乗者がクルマ酔いしにくそうだ。なおブレーキング時の姿勢が必要以上に強く前のめりにならないのは緊急時でも安定性が高い証左である。加えて3気筒エンジン特有の振動もよく抑えられていた。 ■コスパも抜群なSUV 『Tクロス』の美点に室内の広さがあげられる。後席はシートスライドが可能で、荷室に荷物を載せないのならば見た目以上に後席の足元スペースは広い。ただし後席センターにはアームレストの設定がないので4人で長距離を考えると若干の工夫が必要かもしれない。また天井のハンドグリップもないので坐り直しの時なども同様だ。 価格帯はアクティブの329万9000円からRラインの389万5000円。各グレード対応のオプションも用意されているが、スタイルに用意される「デザインパッケージ」は高コスパだろう。その中身は18インチのアルミホイール、beatsプレムアムサウンドシステム、専用のインテリア、ブラック仕様のドアミラーなどで99,000円。 街中でも取り回しのしやすいサイズで、かつ「映え」も間違いなしな3つの新色などクルマに個性と実用性を求めるユーザーは要注目な1台だ
海野大介