佐藤浩市、中川大志、栗原英雄、梶原善 『ONE DAY』を支える『鎌倉殿の13人』俳優たち
二宮和也、中谷美紀、大沢たかおがトリプル主演を務める『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)では、3人の男女の物語が並行して進んでいる。「逃亡編」は銃殺事件の容疑者となり、逃亡中の記憶喪失の男・勝呂寺誠司を二宮和也が演じる。「レストラン編」では、大沢たかお演じるシェフの立葵時生がクリスマスディナーの準備に追われ、「地方テレビ局編」の中谷美紀演じる報道キャスター・倉内桔梗は銃殺事件のスクープを追う。豪華キャストが3つのパートに分かれていて、そのパートを自由に行き来するのが佐藤浩市演じる真礼という謎の愛犬家だ。 【写真】『鎌倉殿の13人』の名シーンのひとつ 中川大志演じる畠山重忠の最後 気になるのは、国際犯罪組織アネモネの2代目ボスで銃撃事件に絡む秘密を隠していそうな笛花ミズキ役で中川大志が「逃亡編」に出演。「レストラン編」には、ベテランギャルソン・蛇の目菊蔵役で栗原英雄が出演していて、「地方テレビ局編」のカメラマン、国枝茂雄を梶原善が演じていること。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に出演していた俳優が、それぞれのパートで強烈な存在感を発揮しているのだ。 2022年に放送された『鎌倉殿の13人』は、脚本を担当していた三谷幸喜が「第41回向田邦子賞」を受賞。今年10月24日に開催された「東京ドラマアウォード2023」では主人公の北条義時を演じた小栗旬が主演男優賞を受賞している。『鎌倉殿の13人』は名作であると同時に、毎週不思議なほど余韻の残る作品だった。ドラマから好きなキャラクターが退場すると感じるような、心に穴が空いたような喪失感を「○○ロス」というが、この作品ほどその○○ロスが生まれていた作品はそうそうないだろう。 佐藤浩市が演じた上総広常が源頼朝(大泉洋)と大江広元(栗原英雄)の策略で謀反の中心人物とされ、見せしめに斬られた第15回「足固めの儀式」の衝撃は大きかった。理不尽な死に追いやられる上総に対して何もできない義時のやるせなさと喪失感。その主人公の思いに共鳴するのが「上総ロス」という一言に集約されているのかもしれない。 『鎌倉殿の13人』のロスといえば、中川大志が演じた畠山重忠の最期が描かれた第36回「武士の鑑」。畠山重忠が潔白であるのは誰もが分かっていることなのに謀反の疑いをかけられ、非業の死を遂げた。「最も頼りになる者は、最も恐ろしい」とは上総に向けられた言葉だが、それは誇り高く力のある重忠にも当てはまる。冷静で隙を見せない重忠が「誰が戦などしたいと思うか!」と声を荒げたシーンは印象深い。 そして、『鎌倉殿の13人』でロスに“貢献”した人物の1人、善児を演じた梶原善の存在もまた大きかった。八重(新垣結衣)の父、伊東祐親(浅野和之)の下人だった善児は、命令されるまま八重の息子・千鶴丸、義時の兄の宗時(片岡愛之助)を殺害。雇い主が変われば、その主人の命令に従うまで。ところが、源範頼(迫田孝也)を暗殺する際に出会ったトウ(山本千尋)を暗殺者に育てるうちに人の心を取り戻したのか、源頼家(金子大地)の息子、一幡を匿ううちに完全に愛情のような温かい感情を持ち始める。結局、主人となった義時の命令でも一幡は殺せずにいたがトウがその役目を引き受け、頼家の暗殺も善児が返り討ちに遭ったところでトウにトドメを刺された。 下人として命令されるまま正確なマシンのように人を殺めてきた善児だが、家族のような存在があることで主人の命令よりも子どもの命を優先した矢先の退場。善児を殺人マシンとしての側面だけ描いて終わらせるのではなく、千鶴丸の死があまりにも残酷だからこそ、一幡との穏やかな時間が貴重だったのだと思えた。 『鎌倉殿の13人』で壮絶な最期の場面が焼き付いている俳優陣が、クリスマスイブの横浜で犬を探したり、記憶喪失の主人公に思わせぶりな話をしたり、報道キャスターを励ましたりしている。3つのパートにそれぞれ分かれ、1日を1クールかけて描くので、登場人物にあえて踏み込んだエピソードまで持ち込まないところがもどかしくもあり、贅沢といえば贅沢だ。 『鎌倉殿の13人』では、頼朝の側近として信任を得て、頼朝の死後は宿老として13人の合議制の1人となった大江広元を演じた栗原英雄。本作の公式サイトの相関図を見ると、元三ツ星フレンチ店の一流ギャルソンだが、どこか抜けた性格でお店に騒動を巻き起こすとある。どうやら妻とも別居中のようだ。『鎌倉殿の13人』では、北条政子(小池栄子)への愛情の重さにも広元の人間らしさが垣間見えたけれど、ギャルソンとしてどんなクリスマスを迎えるのか、まだまだ先は読めない。
池沢奈々見