「執念、魂、根性! これだけです!!」一見すると“昭和的”でもアプローチは“合理的”…夏の甲子園で感じた令和の若手監督「意外な共通項」とは?
「勝って泣き、負けて泣く」監督たちの姿
選手と歩み、心と体を滾らせて指導する。 そんな姿勢を前面に打ち出すひとりに、東海大相模の原俊介もいる。県大会から感極まり涙を流す様子が話題とされてきた男は「泣き虫じゃないですよ」と否定しながらも、準々決勝で関東一に敗れた際にはやはり泣いた。 母校を率いて初めて甲子園の土を踏んだ原の、指導者としての身上はこうだ。 「プレーヤーは結果を出すことだけを考えてくれるだけでいいんです。試合での選手の表情や力加減を見ながら監督は采配して、あとは願うしかないというか。うまくいかなかったら『ごめんな』と謝るだけですから。様々な人がいて、いいことも悪いことも様々あって、そのなかでどうアクションを起こしていくか? と考えながら全員と向き合っていくことで、気付きや教えがあると思っています」 勝って泣き、負けて泣く。石飛や原だけではなく、そんな監督が目立った。 「柏崎から甲子園に」 中学野球の指導者だった吉野公浩は、理事長のこんな嘆願もあって2016年に新潟産大附の監督となった。そして、8年後の今年に甲子園初出場を果たし、新潟に「令和初勝利」をもたらした。 その吉野も、京都国際に敗れた直後に目を真っ赤に腫らしていた。 「春から練習試合で負けか引き分けばかりで、『負けるんじゃないぞ! 』といい続けてきたなかで、夏になってどんどん良くなって、ここまで連れてきてくれて。負けず嫌いな監督に、選手がよくついてきてくれました」 栃木の進学校である石橋を創立100周年で初めて夏の甲子園に導いた福田博之もまた、敗戦時には涙を流していた。そこには悔しさ以上に、「公立の進学校」というハンデとも受け取られかねない環境ながら、強豪ぞろいの甲子園で1勝できたこと。そして、「進学校でも甲子園に行けるチームになろう」と野心を掲げ、それを達成した選手への感謝があった。
甲子園という「夢舞台は青春そのもの」
涙もろさで言えば、26年ぶりに甲子園に帰ってきた進学校、掛川西を率いる大石卓哉が印象に残る。選手やチームを支える支援者、応援団への感謝を、言葉を詰まらせながら実直に伝える。そんな情に厚い監督は、胸に溜めていた想いをしみじみと編んでいた。 「子供たちからすれば公立も私立も関係なく、熱い思いで練習に取り組んでいますから。コツコツ積み重ねていったことが、甲子園という結果に繋がってくれたんだと思います」 選手たちを甲子園へと導いた監督。 大人であろうと、この夢舞台は青春そのものなのである。だからこそ、感情がとめどなくあふれ出る。今年はそれが顕著だった。 小田が少年のような目を向け、このように声を張っていたのが印象的だった。 それはきっと、高校野球に携わるすべての者たちの叫びである。 「僕は野球が大好きです! 愛してます!」
(「野球クロスロード」田口元義 = 文)
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