日銀無風シナリオ、円高歯止めで日本株の上昇要因に-試される逆相関
金融政策を決める日米中央銀行のイベントを通過した後は、両国の金利軌道が明確化し、円高圧力が後退するとの見方が浮上している。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、金融政策の方向感から「緩やかな円高が続くという見通しは変わらない」とした上で、短期的には為替の動きはマイルドになり、「日本株のボラティリティーに与える影響は徐々に小さくなっていくのではないか」と述べた。
円高圧力が一服すれば、投資指標から見た割安感で日本株の再評価が進む可能性がある。相場の強弱を計るテクニカル指標の一つであるストキャスティクスは、TOPIXと日経平均の双方で売られ過ぎを示す30%に近く、TOPIXの12カ月先予想株価収益率(PER)は13.7倍と7月のピーク時に付けていた15.9倍を下回っている。
東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフ株式マーケットアナリストは、日銀は「7月会合で想定外の利上げをしたことで、今会合でも何かするのではないかという恐怖感はある」としながらも、政策変更なしとなれば相場は落ち着き、日本株には割安感から買いが入ると予想する。
金利の織り込み不足はリスク
一方、日米の政治不透明感などから国内債券市場で日銀の追加利上げの織り込みが遅れており、今後金利が急上昇する可能性があるという点で日本株にとってはリスクだ。翌日物金利スワップ(OIS)が織り込む来年1月までの利上げ確率は6割弱と、エコノミストの約9割よりも低い。OISは金融市場の政策金利見通しを表す。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは「国債市場は年内の追加利上げの織り込みがかなり足りない」と指摘。10月からの日銀による国債買い入れのさらなる縮小を踏まえ、年末にかけ10年国債利回りが1%を試すような場面があるだろうとみている。
また、最近の為替市場が日銀幹部の発言に敏感に反応していることも相場の不安定要因として警戒される。市場ではハト派と目されている中川順子審議委員が11日、経済が日銀の予測通りに推移すれば、政策調整を継続するとの見解を示したことを受け、一時140円台まで1円70銭ほど上昇する場面があった。