つないだ伝統、漆を精製 輪島の工房で「天日黒目」
輪島塗で使う漆を夏の日差しにさらして精製する伝統の「天日黒目(てんぴぐろめ)」の作業が23日、輪島市横地町の大徹(だいてつ)八井漆器工房で行われた。能登半島地震で工房は全壊したが、がれきの下から取り出した道具を使って例年通りの手順で実施。伝統をつないだ職人は「まだ生産を再開できない漆器店もある中で感無量だ」と話した。 天日黒目は、輪島塗の仕上げ「上塗り」で使う漆を精製する作業で、市無形文化財に指定されている。おけに入れた乳白色の漆を櫂(かい)でかき混ぜ、水分を蒸発させて光沢のある黒色に仕上げる。作業は解体した工房の前で行われ、漆器生産が減ることを見込んで例年の3分の1となる5キロの漆を2時間がかりで精製した。漆は品質を安定させるため、1年保管して来年使う。 八井貴啓社長(55)は「地震の影響で無理だと思った天日黒目ができて夢のようだ。食事で困っている人が多いので、漆のお椀(わん)を作ってご飯を食べてもらいたい」と話した。