もりおか歴史文化館で「蓬莱図」を読み解く展示 めでたい絵の理由に迫る
もりおか歴史文化館(盛岡市内丸)で現在、企画展「蓬莱図(ほうらいず)をよむ-描かれた理想郷-」が開かれている。(盛岡経済新聞) 【写真】「蓬莱図屏風」を読み解くため、蓬莱について紹介する展示前半 同館が収蔵する狩野林泉による「蓬莱図屏風(びょうぶ)」に焦点を当てる同展。同作品には、鶴や亀、松竹梅などめでたいモチーフが描かれていることから、正月の展示などで出番がある一方、「蓬莱と蓬莱図とは何か」「なぜめでたいのか」といった点は解説していなかった。今回は蓬莱についての伝承などを紹介しながら、屏風に描かれているモチーフについて解説する。 担当学芸員の福島茜さんは「今回の企画展は、蓬莱図屏風を楽しんでもらうためのもの。蓬莱図屏風は、一見すると松竹梅鶴亀図屏風と題しても良いように感じる。ではなぜ蓬莱図なのか、さまざまな視点から蓬莱を知り、描かれた蓬莱の姿を一緒に読み解いてもらいたい」と話す。 蓬莱は古代中国における不老不死の仙人が住む「仙境」の一つで、東の海にあるとされる島。亀の背中にある岩山や浜辺に松や竹、梅があり、鶴や亀が遊ぶ様子が「蓬莱図」として描かれる。展示の前半では美術工芸品、古事記や日本書紀、竹取物語といった古典籍、和歌や漢詩などの資料から、そこに描かれる蓬莱の存在について読み解く。 蓬莱と日本の関係として、中国の歴史書「史記」に登場する徐福のエピソードも紹介。徐福は秦の始皇帝に命じられ、不老不死の薬を探すために蓬莱を目指し、日本にたどり着いたという伝説が各地に残されている。「東の海にあったとされる蓬莱に向かうと、位置関係的に日本にたどり着く可能性はある」と福島さん。展示では福島さんが徐福伝説が残る地域を訪れた時の取材記録も紹介している。 展示後半では「蓬莱図屏風」に焦点を当て、描かれているモチーフの意味からなぜめでたいのかを解説。めでたい象徴として知られる松竹梅や鶴と亀のほか、蓬莱を描くために欠かせない水辺や、ツバキなどの植物から読み取れる意味を説明し、通常は吉祥を表す花ではないカキツバタがなぜ描かれているのかを推測する。 併せて、盛岡藩南部家の資料に出てくる蓬莱について紹介し、殿様にめでたいことがあったら蓬莱の絵を献上していたこと、城内に蓬莱という名が付く場所があったこと、正月に蓬莱飾りを作った記録などを取り上げる。福島さんは「おめでたい内容の展示なので、年末年始の時期にも楽しんでもらえれば」と呼びかける。 開館時間は9時~18時(入場は17時30分まで)。入場料は、一般=300円、高校生=200円、小・中学生=100円。盛岡市内在住・就学の65歳以上と小・中学生は無料。来年2月17日まで。期間中、第3火曜と12月31日~1月1日は休館。
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