[MOM4824]流通経済大柏DF堀川由幹(3年)_異彩を放つ11番の左サイドバックが「奥を見る目」で証明した進化の証
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [9.8 プレミアリーグEAST第13節 流通経済大柏高 2-2 青森山田高 流経大柏G] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 その背中に踊る番号と立ち位置のアンバランスさを見ても、期待されている役割は自ずと想像が付く。ボールを持ったら前へ、前へ。チャンスを作り出すのは当たり前。常に狙うのはゴールに関わること。その上で自分が仕留め切れれば、それが一番最高だ。 「11番は基本的に前線の選手が付ける番号で、自分は後ろの選手ですけど、攻撃を持ち味にしているタイプなので、やっぱりゴールという結果を示していかないといけないなと。自分でゴールを獲れればもっと乗っていけますし、もっと良い形を作っていけると思うので、番号的にもゴールを獲っていかないといけないかなと思います」。 煌く才能が結集した2024年の流通経済大柏高(千葉)の中でも、一際異彩を放っている背番号11の左サイドバック。DF堀川由幹(3年=坂戸ディプロマッツ出身)がサイドを駆け上がっていくアグレッシブさは、チームに大きな推進力を生み出していく。 リーグ戦3連敗という苦しい状況で迎えた、青森山田高(青森)と対峙するホームゲーム。チームを率いる榎本雅大監督が3バックの採用を決断したことで、今季は4バックの左サイドバックを務めてきた堀川のポジションも、左ウイングバックへと変化する。 「ボールを受ける位置がいつもより前になったので、よりゴールへ向かいやすいということと、自分の立ち位置によって相手を引き出したりという変化を起こせるので、そういう意味で3バックは距離感もいいですし、ボールも回せる分、良い形は取れたのかなと思います」。後方に控える左センターバックのDF富樫龍暉(3年)と守備時のリレーションシップを取りながら、いつも以上に前へと出ていく積極性が頼もしい。 とりわけ目立ったのは左のシャドーに入ったMF亀田歩夢(3年)との関係性だ。普段からサイドバックとサイドハーフとして、左サイドで磨いてきた連携を随所に披露。「3連敗中でしたけど、まだ全然先があるので、もう1回立て直してどんどん先に行けたらなと思って、前向きにプレーしていました」という左ウイングバックが、流経大柏の攻撃を牽引していく。 1点のビハインドを追っていた後半23分のワンプレーには、確かな進化の跡を滲ませた。MF柚木創(3年)が蹴った左CKは跳ね返されたものの、ボールを拾った堀川は、まだ両チームの選手が密集するペナルティエリア内の一番奥を、冷静に観察する。 「自分のところにこぼれてきた時に、最初は左の柚木を使って中に入れてもらおうかと思ったんですけど、前を向いたらファーで柳澤が1対1になっていたので、相手の頭を越える長いボールを蹴れば、うまく折り返せるかなと思いました」。空中戦に強いDF柳澤寿哉(3年)の状況を見極めると、正確なフィードをファーサイドへ送り込む。 そこから先のボールは堀川の思い描いたイメージをそのままなぞる。「中には大藤とか大きい選手がいたので、『良い感じに折り返せたら入るかな』と思って、ちょっと長いボールを蹴ったらうまい感じにDFの頭を越えてくれたので、あとは前が決めてくれて良かったです」。柳澤の折り返しをFW大藤颯太(3年)が頭でプッシュ。流経大柏は同点に追い付いてみせる。 サイドバックでのプレーを重ねることで、自分のプレービジョンの広がりも確実に感じているという。「最初はやっぱり近いところしか見えていなかったんですけど、奥を見れば手前も見えてきますし、ボールを蹴る前に味方の動きをしっかり見ながら、そこで声を掛けて自分の思ったように動いてもらえたら良い形に繋がるので、今日はいつもより視界が広がって見えていたのかなと思います」。 試合は2-2のドロー決着となったが、攻め込みながらも1点が遠かったチームにゴールをもたらした堀川の『奥を見る目』が、この日獲得した勝点1に小さくない影響を及ぼしたことは間違いない。 もともとはドリブルで敵陣を切り裂いていくサイドハーフが主戦場。以前から三笘薫のプレーを参考にしてきたが、最近では両サイドバックをハイレベルにこなすポルトガル代表を意識しているという。「今はバックラインなので、後ろで受けるところでは(ジョアン・)カンセロ選手を意識していて、あの選手は周りも見えていて、パスも上手いので、参考にしています」。 その上で欲しているのは自身の結果。いつだってゴールを追及している男が、ここまでのプレミアリーグで無得点という現状に、到底納得しているはずもない。「自分も後ろの選手になったので、失点にもしっかり目を向けながら、やっぱりまだ点を獲れていないというのもあるので、ゴールを獲ってチームを助けたいなと思います」。やはりその携えているメンタリティは、普通のサイドバックに収まらない。 2年半の濃密な時間を過ごしてきた、このチームメイトと成し遂げたい目標はシーズン当初から定まっている。個人のステップアップと、チームとしての成果。二兎を追う決意の言葉が、力強く口を衝く。 「個人としてはやっぱりプレミアでしっかりゴールを決めて、年代別の日本代表にも入っていかないといけないと思っていますし、高校年代では敵なしぐらいのサイドバックに、どんなに分析されても止められないぐらいの選手になりたいですね。自分がチームを全国に導いて、選手権でもプレミアでも日本一を獲りたいと思います」。 流経大柏のアタックを司る11番の左サイドバック。コンバートを前向きに受け入れ、日々たゆまぬ進化を続ける堀川由幹は、果敢に駆け上がっていくそのドリブルで、まだ見ぬ景色を逞しく切り拓いていく。 (取材・文 土屋雅史)
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