“魔法”の要らないふたりー大貫勇輔と宮尾俊太郎が語る、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』共演の喜びと見どころ
2022年7月の開幕から1年半が経った今も、好評のうちに無期限ロングランを続ける舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。2年目から登場した大貫勇輔ハリーと、1年目キャストだった宮尾俊太郎ドラコはすれ違いと思われていたが、今年2月に宮尾がカムバックを果たしたことで共演が実現した。旧知の仲のふたりが語る共演の喜びと実感、そして本作の見どころとは――。 【全ての画像】大貫勇輔、宮尾俊太郎の扮装ビジュアルほか(全5枚)
共にダンサーとしてスタート。親友でありライバルのふたりが演じるハリーとドラコ
――おふたりは2013年のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で同じ役を演じて以来、仲良くしていらっしゃると聞きました。 宮尾 そうですね。同じ役をやることになって、まず勇輔が踊っている映像を観てみたら「こんなにすごいダンサーがいるのか!」と。会ってみたら身体のサイズが僕と全く一緒で、このサイズであんなに動けるのは本当にすごいと改めて思って、「ロミジュリ」中は色々なことを教えてもらいました。あの頃は、僕の家に週4日くらい勇輔がいましたね(笑)。 大貫 これは本当の話です(笑)。Kバレエ カンパニー(当時)のトップを張っている方が、年下の僕に本当に謙虚に貪欲に色々と聞いてきてくれて、その人間性に僕は惚れてしまって。お互い忙しくて会えない時期もありましたけど、連絡はずっと取り続けていて、お互いの誕生日には毎年プレゼントを送り合ってます。……あ! 去年のプレゼント、まだ俺もらってないな。 宮尾 眼鏡でしょ? どれがいいのか選んでくれないと。 大貫 うん、選ぶわ。宮尾さんも何がいいか、また言ってね? 宮尾 でも俺、欲しい物がもうないんだよね。 大貫 じゃあ……愛? 宮尾 うん、そういう無形のものでお願いします(笑)。 大貫 はい(笑)。宮尾さんは僕にとって、尊敬できて、他愛もない話もできて、カッコつけることなく正直に何でも話せる相手。ライバルでもあるのに良いこと教え過ぎちゃったな、と思うこともありますけど(笑)、それも結果的にはお互いが高め合うことにつながっていくんです。 宮尾 それだね。前提にリスペクトがあるから、学び合えるのだと思います。 ――そんなおふたりが、本作で再び共演することになった時のお気持ちは? 大貫 僕がハリーを演じることになってから、色んな人から「宮尾さんのドラコとの共演はないの?」と言われていましたし、僕自身、親友でライバルでもある僕らの関係はハリーとドラコに重なる部分があると思っていたので、本当に嬉しかったです。 宮尾 ダンサーとしてスタートしたふたりが、ミュージカルでのWキャストや共演を経験し、今度はストレートプレイでの共演。苦労を共有し、それぞれに努力も重ねてきたふたりがまた共演したらどうなるのか、という期待が僕は大きかったですね。 大貫 実は僕、まだ自分がハリーを演じることになるなんて思ってもいなかった時に、宮尾さんからこの作品のことをたくさん聞いてたんですよ。 宮尾 そうだね。お互い、その時々の仕事で感じたことや気付きの情報交換はしていたから。 大貫 それは僕にとって、本当にありがたい情報で。特に、ロングラン公演というのは先の見えないトンネルを歩いているような感覚だ、という話には助けられました。 宮尾 稽古中は、これだけの公演回数をこなすのは“鍛錬”だと思っていたんですね。でも開幕してみたら、鍛錬というより“摩耗”だと思うようになって。何度もやっていると、衣裳の同じところが擦れていくのと同じで、身体の一部が物理的に摩耗していくんですよ。でもさらに時間が経つと、これはやっぱり鍛錬だなと。そんな話を勇輔にしていました。 大貫 摩耗して強くなるって、筋肉と一緒だね!(笑) そういうのって、体験しないと分からない感覚ですけど、宮尾さんのおかげで情報としては持っていられたから本当にありがたかったです。