【時視各角】尹大統領が教えてくれた逮捕の技法
高位公職者犯罪捜査処が裁判所から尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に対する逮捕令状を取ったが、尹大統領はびくともしない。戒厳事態直後には連日談話文を出し「法的・政治的責任を回避しない」と言った尹大統領は20日間にわたり閉じこもって外に出ていない。 厳しい警護の中、官邸で粘っている大統領に逮捕状の執行が可能だろうか。大統領府の警護勤務と被疑者逮捕の経験が多い捜査の専門家らは、十分に身柄を確保できると話す。その方法は12・3非常戒厳当時、尹大統領と戒厳軍の言動に明らかになった作戦内容と似ている。 検察によると、尹大統領は李鎮遇(イ・ジヌ)首都防衛司令官に「4人が1人ずつおぶって出てこい」と指示した。警察の捜査官は逮捕令状を執行する時、実際にこの程度の人員を投入する。元警察幹部は「1人を逮捕する時、少なくとも3人で出て行き、5人いれば余裕だ」と話す。いくら乱暴な対象者であっても、捜査官5人ならすぐに手錠をかけるという。 大統領室の警護員が物理的力で法執行に立ち向かった場合、1人当たり5人の捜査官をつければ制圧されるという話だ。大統領に警護員がいるならば、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は国会警衛の警護を受けている。尹大統領が提示した4人は、警護を通じて逮捕を実行する適正人材というわけだ。 尹大統領は封鎖したドアを突破する方法も提示した。軍司令官らに「銃を撃ってでもドアを壊して入って引っ張り出せ」という指示と「ドアを斧で壊せ」という命令をしたことが調査で分かった。検察は戒厳軍の逮捕用道具も公開した。情報司令部所属の逮捕組は野球バット・ハンマー・錐・ケーブルタイ・覆面を持って行った。選管の職員逮捕になぜこのような道具が必要なのかは戒厳指揮部だけが知っている。 適正な人材を投入すれば、大統領室警護員の防御幕を開けることは可能だが、問題は衝突の可能性だ。尹大統領官邸周辺に集まった支持者の安全も懸念される。元検察幹部は「大統領官邸は警護のためにデモ隊が完全に取り囲むことはできず、捜査官の進入はいくらでも可能だ」とし「問題は公務員である警護員が令状執行を阻んだ場合、厳しい処罰が避けられないという事実」と憂慮を示した。 青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)の警護業務を長く務めた元警察幹部は「捜査陣と警護員の衝突だけは防がなければならない」と訴えた。彼は「警護員が逮捕に出た捜査陣と衝突する恐ろしいことは想像すらしたくない」として「尹大統領が今からでも捜査に応じて、罪のない警護員の被害を防ぐべきだ」と述べた。 警察内部では、朴鍾俊(パク・ジョンジュン)警護処長の賢明な行動を期待する声が出ている。行政考試出身で警察大学2期の朴処長は、警察在職中に合理的で穏やかという評価を受けた。重大な時期に誤った判断で自身と警察の名誉を失墜させてはならない。今回の非常戒厳が流血事態に拡大しなかった理由は、戒厳動員部隊の軍人たちが賢明な判断で物理力行使を自制したおかげだ。そのため、国会に進入した軍人には罪がないという世論が形成された。 今回の事態で多くの軍警幹部が苦痛の日々を送っている。うつ病の症状を訴える配偶者もいる。内乱の疑いで重刑が懸念されるだけでなく、家族まで官舎から追い出される事態を心配している。生涯を国家に献身した功労のために受け取る年金もなくなる危機だ。捜査対象に上がった軍将官の弁論を引き受けたパク・サンヨン弁護士は「命令に従わざるをえない軍人の宿命を考慮しなければならない」と主張する。部下たちは相次いで拘束されているが、内乱の首謀者と目された尹大統領は召喚要求にも応じなかった。 尹大統領は先月12日に発表した談話で、自分が国会機能を麻痺させようとしたならば「建物に対する断電・断水措置から取ったはず」と述べた。週末を狙ったはずだとも述べた。自身の不純な構想が自身を縛る悲劇を避けるためには、官邸から自ら出てこなければならない。どれほど多くの公務員の生活を破綻させるつもりなのか。 姜周安(カン・ジュアン)/論説委員