三代目 J SOUL BROTHERSが発揮するストリートマインド KM、GRP……敏腕プロデューサー陣を迎えた意義
あえて説明するまでもない事実だが、EXILEをはじめとするLDHアーティストの作品は、以前から“ストリート”(というと概念は曖昧ではあるが……)を基盤とするトラックメイカーやプロデューサーを数多く起用してきた。その代表例としてはBACHLOGIC(以下、BL)が挙げられるだろう。00年代後半から現在に至るまで、NORIKIYOやAKLO、KREVA、RHYMESTER、SALU、テークエムなどのプロデュースやトラックメイク、コラボなどを手掛け、ヒップホップシーンを語る上では欠かせないプロデューサーであるBL。DOBERMAN INC(現:DOBERMAN INFINITY)やWOLF PACKといったD-ST.ENT周辺作を中心としたトラックメイカー/プロデューサーとして、そして2006年リリースのSEEDA『花と雨』のフルプロデュースでアンダーグラウンド/日本語ラップシーンで名前を高めていた彼を、EXILEは2007年リリースの「24karats -type EX-」にプロデューサーとして起用(先例としてはFull Of HarmonyやYA-KYIMなどもメジャーではBLを起用していた)。以降も「Touch The Sky」や「Each Other's Way ~旅の途中~」でもタッグを組むなど、BLはEXILE作品に多数参加し、その作品を通してより広範に名前を響かせ、EXILEも進行形のストリートのエッセンスを取り入れることになった。 【写真】BE:FIRST SOTAらも駆けつけたNAOTOソロステージ LDHアーティストの作品には、他にもDirty Orange、NAOtheLAIZA、ZETTONなど、ヒップホップやストリートとの接着性の高いプロデューサーが数多く関わってきた。そして、その流れの一つの到達点とも感じられるのが、三代目 J SOUL BROTHERSが11月13日にリリースした10枚目のアルバム『ECHOES of DUALITY』だろう。 今作において、三代目JSBの楽曲上のパフォーマンスに驚きを感じたのはもちろん、先行シングルとして「BLAZE」「Baby don't cry」がリリースされていたものの、収録曲は基本的にはアルバム曲として制作され、「アルバムというパッケージでリスナーに到着する曲」で占められている点にはさらに驚いた。畢竟、その形で制作されるアルバムはコンセプチュアルなものとなるわけだが、そのコンセプトの一つには、ストリート的な感性を持ったプロデュース陣や、ヒップホップマナーなどを基本に据えたトラックメイカー/サウンドクリエイターが多く起用されたという要素があるだろう。 まずアルバムのオープニングを飾る「BLAZE」は、Ye(Kanye West)とTy Dolla $ignのユニット ¥$のコラボアルバム『VULTURES 1』に収録された「STARS」のソングライターの一人であり、Post Maloneなどの作品に参加するLucien Parkerと、こっちのけんと「はいよろこんで」の共作曲/トラックメイクや、ケツメイシや韻マンの作品に関わるGRPが作曲とプロデュースに参加。ダークなサウンドで現在の三代目JSBのテーマである“PETAL & THORN”のTHORN=棘を表現する。 ブリーピーなベースが印象的な「TOKYO BLACK HOLE」は、ヒップホップユニット CIRRRCLEのメンバーであり、SIRUPやmaco marets、BE:FIRSTの作品に携わるA.G.Oがプロデュースに参加した。PETAL=花弁を表現したメロディアスな「Baby don't cry」は、変態紳士クラブのメンバー/トラックメイカーであり、ソロとして「EDEN feat.にしな&唾奇」などもリリースするGeGがプロデュース。Yo-seaやHIYADAM、IOなどが所属する音楽レーベル AOTLに所属するプロデューサーのGooDeeと、ラッパー/シンガーソングライターの3Houseは、「You got my mind」の制作に参画した。 Awich「口に出して」やKOWICHI「FFF feat. Benjazzy」などを手掛け、『ラップスタア 2024』の審査員でもあるZOT on the WAVEがプロデュースした「Lucky」には、作曲クレジットにJin Dogg「SADMAD」やRed Eye「Red Bull 64 Bars」をプロデュースしたHomunculu$の名前がある。この曲のように、現在はスタンダードな制作形態となっている、複数名で楽曲制作を行うコーライティングシステムがこのアルバムでも取り入れられ、LEX「なんでも言っちゃって feat. JP THE WAVY」の制作などで知られるKMがプロデュースした「LIT IT UP」には、BAD HOPやOZworldを手掛けるFouxと、Tokyo Young VisionのOSAMIが作詞と作曲にクレジットされている。同様にAwichや最近では梅田サイファーを手掛け、LDHではPKCZ®作品にも参加したChaki Zuluプロデュースの「CRAZY-CRAZY-CRAZY」には、LDHアーティスト作品では定番のT.Kura、JAY'EDというラインナップに加え、avex/LDH主催の『GLOBAL JAPAN CHALLENGE』出身であるKenya Fujitaの4人が作詞作曲にクレジットされている。