8月26日は「火山防災の日」 富士山噴火の備え、知識浸透せず 静岡県、周知が課題
活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正により、2024年度から8月26日が「火山防災の日」に制定された。静岡県でも富士山噴火に伴う火山災害に備えるため、周辺市町で火山避難計画の改定が進むが、300年以上噴火の記録がない富士山噴火への備えに関する知識はいまだ浸透していない。外国人に向けた情報発信については具体化されておらず、周知が課題になっている。 県地震防災センター(静岡市葵区)は8月中旬、火山防災の日に合わせてパネル展「火山災害に備えよう」を始めた。火山現象や富士山の噴火警戒レベル、降灰による生活への影響など火山災害の概要を9月末まで紹介している。県危機管理部によると、富士山は252カ所の噴火地点が想定されること、噴火警戒レベルごとに避難の優先順位が異なることなど、内容の難しさが浸透のネックになっている。同センターの担当者は「9月には御嶽山(長野、岐阜県)噴火から10年を迎える。普段触れる機会がない火山防災を知ってほしい」と今回の展示を企画。認知度を高める取り組みの重要性を強調する。 ■外国人向けの多言語対応未整備 中でも、外国人向けの多言語対応は未整備だ。23年に改正された富士山火山避難基本計画では、富士山噴火の可能性が生じた場合、一般住民の避難と重ならないよう、気象庁から噴火警戒レベル2に相当する「火山の状況に関する解説情報(臨時)」が発表された時点で登山者に下山を促す。噴火警戒レベル3(入山規制)のうちに山小屋関係者を含めて下山を完了させる必要がある。 登山者へは登山アプリ「コンパスEX」や山小屋の呼びかけを通じて通知する想定。ただ、山小屋の関係者によると、拡声器の音は数十メートルしか届かず、登山者が下山途中にすれ違う際に呼びかけるしかないといい、「『危ないから下りろ』と叫ぶだけになるだろう。言葉が分からない人、聞かない人に構っていられないのでは」と懸念する。 外国人住民向けのマニュアル整備も未着手だ。県が発行する「やさしい日本語」版の避難生活ガイドブックや地震防災ガイドブックには、火山災害に関する記載がない。県多文化共生課は「今後、追加も検討していきたい」としている。同課は災害情報について、やさしい日本語、英語、ポルトガル語など5カ国語で発信する外国人向けフェイスブックページで逐一発信するとして閲覧を呼びかけている。 富士山火山避難基本計画 静岡、山梨、神奈川の3県などでつくる富士山火山防災対策協議会が2014年に初めて策定し、23年に改定した。新計画に対応するため、周辺市町では地域防災計画の修正を基本的に完了。自治体ごとに避難計画の見直しや地域住民への周知を進めている。新計画では避難生活の負担の大きさなどを考慮し、規模や様態に応じて段階的に避難地域を拡大することを基本としている。
静岡新聞社