PSA検査、腫瘍マーカー検査、大腸内視鏡…がん検診の落とし穴 検査そのものがリスクになるケース、「偽陽性」や「偽陰性」の可能性も考慮しなければならない
定期的な検査や健診で、がんなど命に関わる大病が早期発見されるケースは少なくない。一方で「明らかに無駄な検査があるのも事実」と医療経済ジャーナリスト・室井一辰氏は指摘する。
「例えば日本人男性のがん部位別罹患者数1位である前立腺がんの早期発見に用いられる『PSA検査』です。そもそも前立腺がんは進行が遅いため、特に高齢者の場合は発見されても治療を要しない場合があります」 PSA検査で見つかる前立腺がんは悪性度が低いことが多く、欧米では監視療法が一般的だが、日本では手術が選択されるケースも少なくない。 「結果、手術による患者の身体的・心理的負担が重くなりがちです」(同前) 大腸がんや胃がん、肺がんなど全身の様々ながんリスクがわかる「腫瘍マーカー検査」も必要性が疑問視されると室井氏は言う。 「PSA検査同様、採血や採尿だけで受けられる簡便な検査ですが、わずかでも異常値が出た場合、部位を特定するための精密検査を何度も受ける必要があります。実際はがんでなかったというケースも多い。一方で進行がんでないと異常が出にくい場合もあり、がんの早期発見に必ずしも資するわけではありません」
検査そのものが孕むリスク
検査そのものがリスクを孕む場合もある。 「大腸がんの早期発見に役立つ大腸内視鏡検査は、担当医の技術によっては検査時に腸に穴が開き出血のリスクがあり、誤診による過剰診断の可能性もある。米国消化器学会では、家族歴がなく、一度内視鏡検査を受けて問題がない人は、その後10年間は不要とされています。少なくとも毎年受ける必要はないでしょう」 検査では、「偽陽性」や「偽陰性」の可能性も考慮しなければならない。 「偽陽性の場合、精密検査の結果が出るまでの追加費用だけでなく、心理的負担も大きい。偽陰性では病気が見逃されるリスクも。高齢者の場合は、検査がきっかけで健康が損なわれることもあります。患者さん自身が状況やリスクに応じた要・不要の判断ができるよう情報収集することが重要です」(同前) ※週刊ポスト2025年1月3・10日号