消費増税の低所得者対策 「軽減税率」って何?/早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
急速な高齢化が進む日本ではお医者さんにかかる医療保険や老後の年金、どうしても暮らしていけない人を救う生活保護などの「社会保障費」が年1兆円のペースで増えています。それをまかなうため消費税を上げると決めました。この税の特長は「広く薄く」。「薄く」はいいのですが「広く」に問題があります。生活が苦しい人ほど打撃を大きく感じる点で、国は和らげる作戦をいくつか考えています。そのうち有力な「軽減税率」という案を外国の例なども参考に紹介しましょう。
「逆進性」の緩和が目的
税は国民が払い役所などの行政が国民のためになるサービスに使います。道路や橋を造って生活を便利にしたり、貧しかったり気の毒な人を助けたりと普通の会社や個人ではできないところへ配分する役割が重要です。なので常識ではお金持ちからたくさんいただく「累進性」(次第に増やしていく)が基本。ところが消費税だとその反対の「逆進性」が生じるという有力な説があり、そこをケアするのが軽減税率の発想となります。 「逆進性」といっても貧しい人ほど多く納めるという意味ではありません。そういう気持ちになって不公平感が広がり、社会を不安定にする可能性が問題なのです。具体的には生活必需品にかかる消費税。文字通り「生活」に必ず要る品なので金持ちも貧しい人も買うしかありません。電球、トイレットペーパー、最低限の食費、石けんなど。例えば年収1億円の人にとってそれは微々たる金額です。
難しい「生活必需品」の線引き
しかし厳しい生活を送っていると「収入=生活必需品」という方も多いでしょう。命に関わる出費ともいえる生活必需品まで増税すると寒い冬に1枚のふとんで暖を取っているきょうだいからそれを引きはがすような無慈悲な行いともなりかねません。それは先に述べた税によるサービスのあり方にも反します。 最大の課題は何をどこまで「生活必需品」とするかで現在ももめています。消費税に似た制度があって軽減税率を取り入れている外国の例を見てみましょう。