1964年の新潟地震、知っていますか? 液状化注目契機に、建物倒壊で26人死亡
気象庁によると、日本海側の各地に津波が押し寄せ、新潟県村上市では海面から約4・9メートルの高さで津波の痕跡が確認された。 当時の国の資料によると、建物の全壊は最も多い新潟県で約1450棟、次いで山形県でも約500棟。一部破損は7万棟弱にも上った。液状化現象は新潟市内だけでなく山形県酒田市などでも起き、新潟市内では4階建ての県営アパートが横倒しになった。倒壊した建物の下敷きになるなどして、新潟県外も含め26人が犠牲になった。 ▽能登半島地震でも同じ範囲が液状化 液状化現象が注目されるようになったのは、新潟地震からだと言われている。そして実は、新潟市では能登半島地震でも液状化が起きている。新潟大災害・復興科学研究所の卜部厚志教授(地質学)は「60年で2回目の被害だ。対策をしないと必ず繰り返すことになる」と強調している。 前出の阿部さんは1989年、家を新築する際に二の舞いにならぬよう、家屋の下部に鉄筋コンクリートを全面的に入れる「ベタ基礎」を取り入れた。当時は最先端技術と言われたという。しかし、能登半島地震では新潟市西区は震度5強の強い揺れを観測し、同区を中心に液状化現象が発生。5人が暮らす阿部さん宅の床下でも地割れが起き、家全体が沈んだり傾いたりして全壊と判定された。
国土交通省北陸地方整備局によると、液状化のメカニズムはこうだ。地中では砂の粒子が互いに結合し、その間を水が満たしている。強い揺れが加わると、結合していた粒子がばらばらになり、建物は水に浮いているような状態になる。その結果、建物は傾く。地下で圧力が高まり、逃げ場を失った水が泥と一緒に地表に噴き出る「噴砂」も起きる。 卜部教授らの調査によると、新潟地震と能登半島地震で液状化したのはほぼ同じ範囲。信濃川の旧河道や、かつて水田だった場所を宅地造成した場所だった。北陸地方整備局が公表している「液状化しやすさマップ」でも危険性が高いとされていた地域だ。 卜部教授は「新潟地震当時は液状化に関する研究が進んでおらず、危険性が認識される前に宅地化された可能性がある」と話す。液状化は地下水位が高い場所で発生しやすいため、工事で水位を低下させたり、固い地盤を作るために地中に薬品を注入したりする方法があるが、費用が高く、合意形成に時間がかかるといった課題もある。卜部教授は「行政が主導して、街区単位で地盤改良をすることが必要だ」と訴える。