「野鳥絶やしたくない」観察保護に30年・宮原明幸さん 減少傾向に危機感も【佐賀県】
サガテレビ
シリーズでお届けしている「佐賀人十色」 今回は、寝ても覚めても野鳥に夢中。野鳥を追いかけて30年の男性です。 時には観察、時には保護とまさに“鳥一色”の日々を送るなか、男性を突き動かすのは「野鳥を絶やしたくない」という思いでした。 望遠鏡をのぞくのは毎日。 「みなさん暑そうやね~~全部口開けてる」 宮原明幸さん70歳。 鳥の観察や保護を手がける「日本野鳥の会」の佐賀県支部長です。 【宮原明幸さん】 「こんな身近に見られるんだと思ったのと、あのかわいい姿に感動して…それからですよね」 野鳥に魅了されて30年、いま、鳥をとりまく環境に危機感を募らせています。 「ほとんどが1歳の誕生日を迎えられないということ。今、そういう世界でこの鳥は生きています」 夜明け前、宮原さんは早速車を走らせます。 向かった先は白石町の小屋。望遠鏡をのぞくとすぐにペンを走らせます。 【宮原明幸さん】 「まず一番最初に見るのはひながちゃんと生きているのか。あとは親が一緒にいるかいないかですね」 視線の先にあるのは…国の特別天然記念物コウノトリのひなです。 【宮原明幸さん】 「カラスが来なかったらこんな見張りも何もしなくていいんでしょうけど…どうしてもカラスの食害が怖いもので」 野外に生息するのは全国でわずか360羽と絶滅危惧種に指定されているコウノトリ。このうち1つのつがいが今年も町内で子育てを始めました。 天敵のカラスやトンビが寄り付かないよう野鳥の会は早朝から夜まで3交代、1人あたり5時間目を光らせます。 【宮原明幸さん】 「自分の子供とか孫を見るようなそういう気持ちですよ。死んだら悲しいし…そんな思いで見てます」 1羽のひなは若鳥になるまで順調に成長。 “白石生まれ”を示す足環が取り付けられ、7月には巣立ちも確認されました。 Q.ここでは何を? 「このあとはコアジサシの見守りです。なかなか交代でやってるけど…人手がなくて大変です」 佐賀市の浄水場跡地。 絶滅危惧種の渡り鳥コアジサシが4年連続で子育てにやってきました。 こちらも、1日3交代で片時も目を離しません。 時には、コウノトリとコアジサシ合わせて10時間見守ることもあります。 【宮原明幸さん】 「今の時期が一番忙しい“繁忙期”です、はい。本当に目が回るほど忙しい」 去年巣立ったひなは116羽。今年も約20羽がすくすくと育っていて、宮原さんたちの活動は着実に実を結んでいます。 【宮原明幸さん】 「“鳥見”から考えたらこの時期が一番楽しい時期。夏羽といって鳥もきれいに着飾るし、いろいろな鳥が南の国から渡ってくる、そして北の国に通過していく鳥がいる。一番鳥を見ていて楽しい時期がこの時期ですけど…残念ながらと言ってはいかんけどコウノトリとコアジサシに全ての時間を奪われています」 【会員歴15年目女性】 「シフトで見守り当番を決めるが一番たくさん担当している。他の人の3倍も4倍も。行動力はとても敵わない」 【会員歴6年目男性】 「宮原支部長の鳥に対する愛情そのものですね、“なんとか守ってやりたい”と」 元々、パンを作る会社の社員だった宮原さんが鳥にはまったのは30年前。 娘をバードウォッチングに連れ出したのがきっかけでした。 【宮原明幸さん】 「『あっ、こんな所にこんな鳥が身近にいるんだ』と、その驚きですよね」 これまで目にした野鳥は約450種類。 しかしここ数年、ある“危機感”を感じるようになったといいます。 自宅でまとめているのは…県内の“野鳥の数” 例えば、ツバメだと10年前から4割減少するなど、虫や小魚を食べる野鳥が姿を消しています。 【宮原明幸さん】 「本当…減ったね。いま、山行っても鳥いないですよ。人知れず消えて行っている鳥があるということ。みんな知らないといけないし、それだったらどうしたらいいのか一回立ち止まって考えてほしいと思う」 環境破壊やカラスの増加など要因は様々。それでも、“大好きな野鳥を絶やしたくない”この思いが宮原さんを保護活動へと突き動かしています。 「おはようございます!野鳥の会の宮原といいます」 この日、宮原さんの姿は佐賀市の小学校にありました。 「海岸も高波が来たらヒナも卵も全部持っていかれて全部死んじゃいます。こういう環境で子供を育てるのがコアジサシという鳥。でも今、そういう環境すらなくなってしまいました」 さらに実際に見学してもらうことで今の現状を伝えます。 【児童】 「鳴いてるところとか、動いてるところがかわいかった。コアジサシが安全な場所で暮らせたらいいなと思った」 「居場所がせっかく前まであったのに人がいっぱい来てなくなったのは悲しい」 【宮原明幸さん】 「自然に触れることによってこの子達が大人になった時自然を大切にしようとか、守ろうとか、そういう気持ちがはぐくまれたら。それが私たちの一番のご褒美。うれしいことです」 野鳥のいる日常を当たり前に。宮原さんはこれからも“鳥一色”の日々を送ります。
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