【毎日書評】ジョブ型雇用・年俸制…企業人事が陥りがちな失敗とうまくいかないとき見直すべきこと
成果主義の失敗、職務主義(いわゆる「ジョブ型」)の失敗、年俸制の失敗、人事部廃止の失敗など、1990年以降、企業は「人事の失敗」を繰り返してきた。そしていまなお、90年代とさして変わらない「人事」が多くの企業で行われてもいるーー。 『人事で一番大切なこと 採用・育成・評価の軸となる「人事ポリシー」の決め方・使い方』(西尾 太 著、日本実業出版社)の著者は、そう指摘しています。大学を卒業してから30年以上、「企業人事」の領域で仕事をしているという人物。人事コンサルタントとしても、500社以上の企業人事を見てきたのだといいます。つまり、多くの失敗を見てきたわけです。 しかし、そもそもなぜ「企業人事」は失敗するのでしょうか? この問いに関連して著者は、「考え方」のあり方を指摘しています。人事制度、採用方法、研修などをどのような「考え方」のもとで行っているのか? その「考え方」の突き詰め方が足りないからこそ、失敗につながってしまうということです。 基本給を下げることを是とするのか。なぜ下げるのか。給与はなぜ上がるのか。賞与は何に対して払うのか。社員のキャリア形成をどのように考えるのか……。 これらは企業ごとに違う「企業の、働く人に対する考え方」によります。 「長く働いてほしい」という企業もあれば、「人が新陳代謝をしていくほうがいい」という企業もあります。それぞれの企業の個性ともいえます。 私たちはその企業の個性ともいえる「軸」となる考え方を「人事ポリシー」と呼んでいます。 この軸となる「考え方」=「人事ポリシー」をしっかりしないまま、人事施策に取り組んでしまうから「失敗」してしまうのです。(「はじめに」より) もちろん人事に正解はありません。しかし、そうであっても、失敗は極力減らす必要があります。そこで本書において著者は、いい人材を採用でき、人が育ち、自分で考えて結果を出し、チームワークに優れ、好業績が安定的に発揮できる人事のあり方を伝えようとしているのです。 きょうはそのなかから、Chapter2「人事は『やり方』の前に『考え方』に焦点を当ててみたいと思います。