尚玄インタビュー 平和は当たり前ではないということを感じてほしい『彼方の閃光』
―― 映画に出演することが出来ずに悩む若者からの相談を受けることがあります。尚玄さんならどんなアドバイスをされますか。 本当に若い俳優が、映画に出演するのは大変だと思うんです。だけど「映画に出たい」と言いながら、映画館に行かない若い人が結構居ると思っています。チャンスがあるかはわかりませんが、とりあえず東京には監督さんやプロデューサーが立つトークショー付きの上映が沢山あるので、そこに足を運んで欲しいです。そこに行けば監督やプロデューサーがどのように映画を作ったか学べるし、知り合いになれるかもしれない、その可能性だってあるんです。その出会いを掴むのは自分だと思うので行動して欲しいです。僕らの若い頃はこんなにも沢山の映画もイベントもありませんでしたし、映画に出演できるということだけでも、凄く重要で難しいことでしたからね。あと最近はスマホで簡単に映像も撮れるので、仲間内でアイディアを出し合って作品を作ることもとてもいいことだと思います。とにかく行動することです。 ―― 尚玄さんは監督など映画を撮る方に興味はないのですか。 機会があればと思いますけど‥‥。若い頃から機会があればとは思っていましたが、やはり色々な凄い才能の人たちと出会ってしまっているので恐れ多いと思ってしまいます。 ―― 以前、本が凄く好きな女優さんに「本を書いてみたらどうですか」と言ったことがあります。そうしたら彼女は「いい小説を読み過ぎて恐れ多い」と言ったんです。 同じですね(笑)。 ―― でも、昨日会ったある監督は「人によって好みも評価も違うから、いいものなんてない」と言ったんです。その言葉を聞いて目からうろこでした。 確かに。 ―― 今後、どんな作品に出演したいと思われていますか。 今まで通り一つ一つ大切に、挑戦的な作品を真摯にやっていくだけです。今は私生活とのバランスもいいので、そんなに忙しくなっても困るし(笑)。子どもも生まれて父親にもなったので、今回の作品も、出演した『赦し』(2023)などでも、今までは想像で父親という役を演じていましたが、今後は父親という役に対しても変わっていくと思います。そんな風に変わっていくのが楽しみです。 それに先ほども話しました、僕らが新しく立ち上げた「Cinema at Sea - 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が立ち上がるのも面白いと思っています。今回の映画祭の中には企画ピッチングもあるんです。今年も環太平洋の国々から素晴らしい企画が集まりました。これからこの映画祭が映画を通した新たな文化交流の場となるよう僕も尽力していきたいと思っています。 日頃から映画愛に溢れ、新人監督作品や海外の監督作品など様々なミニシアター作品に出演している尚玄さん。映画祭や映画館にも頻繁に足を運ぶご本人に、作品選びや作品との関わり方について聞きたいと思っていたことから今回、インタビューに答えてくださいました。しかもご自身の口から第一子誕生を聞いて嬉しくなった今回の取材。話が尽きなく、時間が足りなさ過ぎて、また今度インタビューを頼もうと思った実りある時間でした。
取材・文 / 伊藤さとり(映画パーソナリティ)