アンジェリーナ・ジョリーが再び描く戦争の悲劇「観るのがつらい映画ですが…」最新監督作に込めた思い
これまでのアンジェリーナの監督作と違い、今作は、どこが舞台で、いつの時代の出来事かがはっきりと描かれていない。上映後のQ&Aで、原作者のバリッコと共に小説を脚本化した際に気をつけたことを質問されたアンジェリーナは、それは意図的なことだと明かした。
「私が初めてバリッコに会った時、彼は、『彼ら(スタジオ)はあなたにエンディングを変えるように強制する。国を選ばせようとする。それが何年(の出来事)なのかを決めさせようとする。でも頑張って(変えないように)。それは、意図されたものだから』と言っていました。でも、何かを説明しなければならないという衝動や気持ちから、そうしておけないことがあります。今思い返すと、それは警告ではなく、挑発に近い感じだった気がします(笑)。普遍的なものであるということへのこだわりだったと思うんです」とバリッコとのコラボレーションを振り返った。
またアンジェリーナは、「あまりにつらい役だから、最初出演を断った」と壇上で明かしたハエックと、ビチェルの演技を絶賛。「原作はとても力強いですが、映画では、あの(2人が話をする)テーブルで何が生まれてくるかに大きくかかっていました。かなりの映像を撮影しました。というのも、彼らが並外れた演技をしてくれるまで、どこまでそこにとどまることができるか、どこまで再現しなければならないかわからなかったからです。そして、彼らがとても力強かったから、私は(二人の会話に)とどまることができました」と語っていた。
ベネチア国際映画祭でお披露目された『マリア』でソプラノ歌手マリア・カラスを演じ、久々に女優業の方でも大きく注目されているアンジェリーナ。6人の子供たちの母親業が忙しかったことで映画からしばらく離れていたようだが、子供たちが大人になり、本作でも、息子のマドックスとパックスが、現場で助監督などを務めていたそうだ。(吉川優子 / Yuko Yoshikawa)