なぜ米メディアは侍J「プレミア12」Vを“無視”したのか?
一方、米国の主要メディアで日本の優勝を伝えたところは、ほとんどなく、CBSスポーツ、NBCスポーツ、ボストングローブ紙などが、3位決定戦で米国がメキシコに延長戦で敗れ東京五輪切符をつかめなかった事実を伝えたに過ぎなかった。しかも、CBSスポーツは、「米国代表がWBSCプレミア12で2020年東京五輪の出場権をつかみ損ねた。スリリングな銅メダル決定戦で2-3でメキシコに敗れた。来年の夏に野球が五輪競技に戻ってくるとき、米国は、そこにいないかもしれない」と悲観的な見方をした。 米国は、来年3月にアリゾナで行われる米大陸予選、その後、台湾で行われる世界最終予選で出場権獲得を狙うが、NBCスポーツは、「プレミア12の米国チームのロスターには2Aや3Aの有望株選手が多く含まれていたが、MLBのチームがスプリングトレーニングの期間に行われる米大陸予選には、どのようなマイナーリーグの選手を派遣するのかはまだ不明だ」と、疑問を投げかけていた。 もし野球の母国、米国の代表が東京五輪に出場できないとなると、大問題のはずだが、現在、米メディアの関心は、最優秀防御率と奪三振王のコール(アストロズ)や世界一となったナショナルズのエース、ストラスバーグら大物FA選手の去就とアストロズのサイン盗み問題などに向いており、五輪代表出場権をかけた「プレミア12」への興味は薄かった。 そもそもメジャーリーグ真っ只中に行われる東京五輪には、現役の主要なメジャーリーガーが出場しないため、米国の野球ファンも五輪野球を本当の世界一決定戦と認めておらず、必然的に関心も薄くなり報道も縮小気味になるという事情がある。そこがNBAがドリームチームを結成して五輪へチームを送り込むバスケットボールとの大きな違い。 また米国のテレビネットワークは、巨額の放映契約をIOCと結んでいるが、五輪種目に関しては、バスケットや水泳、陸上短距離など特定の競技でしか高視聴率を期待できないという現実があり、どうしても五輪報道に偏りが出てしまう。野球が五輪競技として存続できない理由は、このあたりの欧米との事情ともリンクしている。 ただ東京五輪の野球は、日本中を巻き込んで大きな盛り上がりを見せることは間違いない。日本にとって五輪初の悲願の金メダルを獲得し、欧米メディアを振り向かせるようなムーブメントを世界へ広げたいところだろう。