EVのバッテリーも中を開けると「円筒型」「角型」「ラミネート型」とさまざま! それぞれどんな特徴があるのか?
円筒型は乾電池と同じ形状
電気自動車(EV)に駆動用として搭載されるバッテリーは、最小単位であるセルに、形状の違いがいくつかある。代表的なものでいえば、円筒型/角型/ラミネート型などだ。 【画像】ラミネート型バッテリーセルの画像を見る 円筒型は、乾電池などと同じ、筒形をしていて、筒の頭頂部の出っ張りが正極(+極)、反対側の端が負極(-極)になる。ケース内の電極は、巻物のように巻かれている。 米国のテスラがEV発売に乗り出した際に用いられたのがこの円筒型で、それは、パーソナルコンピュータ(PC)などで使われていた汎用のリチウムイオンバッテリーの活用だった。 円筒型は、たとえば初代のトヨタ・プリウスのハイブリッド車(HV)向けニッケル水素でも採用されたことがあり、同じ円筒型のニッケル水素バッテリーは、ホンダの初代インサイトでも使われた。 使い捨ての乾電池だけでなく、充放電を繰り返せる単3蓄電池などでもニッケル・カドミウム(通称ニッカド)やニッケル水素で家庭電化製品に使われてきた形式なので、生産技術が確立され、原価を抑えることに成功している。 現在でも、テスラのほか、SUBARUやマツダがパナソニックの円筒型バッテリーの契約を結ぶなど、新しいニュースもある。また、高密度な新しい設計の円筒型の開発も行われている。 ただ、正負極が筒の上下両端にあるため、配線などに工夫が必要だ。また、数多くのセルをバッテリーケースへ詰め込もうとすると、筒状の丸い外観なので、隣同士のセルとの間に隙間が生じ、積載密度で劣る可能性がある。 ほかに、電極が巻物のように巻かれているため、中心部と外周側で温度差が生じる可能性があり、リチウムイオンバッテリーで重要な温度管理に難しさがありそうだ。そこで、余裕ある容量の確保と、充放電制御の成熟度が試される。
BYDのブレードバッテリーは角型の拡張版
角型は、円筒型を四角い箱状にした形式で、EVで多く使われている。巻物のような電極を箱のなかに収めることで形作られている。円筒型と違い、正負極が同じ端面にあるので、配線などしやすくなる。 また、バッテリーケースに詰める際、四角い箱状なので隙間なく並べることができ、効率よく数多くのセルを車載することができる点が光る。 ただし、箱の高さが、車両の床の高さに影響を及ぼす。そこは円筒型も同じだ。車両のパッケージング上、床を低くし、客室内の足もとを広く確保するには、高さを抑えた寸法を設計することになる。とはいえ、車種ごとのパッケージングに応じたいくつもの寸法違いを製造しようとすれば量産性に欠け、バッテリー原価を高める一因になる。 決められた寸法の角形をいかに効率よく車載し、車体としてのパッケージングを上手にこなすかが問われるだろう。車高の高いSUV(スポーツ多目的車)にはそれほど影響はないかもしれないが、背の低いセダンやハッチバック車などでは、床の高さに影響が出るかもしれない。 中国のBYDのブレードバッテリーは、角型の拡張版といえる。高さを抑えながら、左右のサイドシルをつなぐ横長形状とすることで、電極の面積を稼いでいる。それによって、三元系と呼ばれる高性能な正極材に替え、リン酸鉄を正極材に使いながら、適切な一充電走行距離を稼ぎ出している。 ラミネート型は、レトルト食品などに使われるパウチのような薄型で、平べったい形状になる。正負の電極は、角型と同じように同じ端面に左右に並ぶ。 厚みが薄いことを活かし、4セルをひとつにまとめたモジュールでも、厚みが3.5cmほどであるため、プラットフォームの形状、座席位置などにあわせて積み方を変えれば、パッケージング上客室の足元の床を低く、一方で高さを許容できる場所には何層もモジュールを重ねるやりかたができ、バッテリーケースの高さを調整しやすい利点がある。 また、薄く平べったい形状であるため、表面積が広くなることから冷却性能に優れ、温度管理もしやすくなる。 ほかに万一、セルに不具合が出た場合でも、モジュールごとに交換できるので、維持管理がしやすい。モジュールごとのセルの良し悪しは、EV後の再利用でも、フォーアールエナジー社が容量計測の技術を確立し、定置型などへの転用に役立っている。 電極は、円筒型と同じ巻物状を平らにした事例と、短冊状にした電極を積み重ねる事例とがある。日産リーフなどで使われるものは、後者の短冊形電極の積層方式である。電極に折れなどの負荷がかかりにくいので、安全性に優れる。 韓国のLGや、それを活用したGMのアルティウムバッテリーは、巻物状の電極を平らにしてパウチに収めているとされる。
御堀直嗣