「金利のある世界」に突入する日本人が覚悟すべき3つのこと
いま、40代よりも若い世代は「金利のある世界」を経験していないだろう。生まれた頃から銀行にお金を預けても利息はほぼほぼゼロで、住宅ローンの変動金利も1%に満たない超低金利しか経験していないはずだ。 【写真】方針転換を考えているとされる、日銀の植田和男総裁 その前提が今年は大きく崩れそうだ。われわれを取りまく日本の金利水準は、日銀の政策金利によって決定される。2023年まで10年間続いた黒田東彦前総裁時代の「異次元緩和」では政策金利もゼロ金利、マイナス金利だった。昨年就任した植田和男日銀総裁は慎重に前総裁の政策を継承してきたが、そろそろその方針を変える時期に来ているようだ。 2024年以降が「金利のある世界」に変わると予測される根拠はふたつある。 ひとつは「実質インフレの進行」だ。スーパーの食料品の値段が上がっているのには皆が気づいているだろう。これが名目インフレの進行だ。その際、賃金がそれに伴って上がればそれほど困ることはない。現状はというと、名目インフレよりも賃金の上昇が低い。つまり実質インフレが進行している。 この実質インフレを止める有力な手段が、金利を上げることだ。だから実質インフレが社会問題になっている以上、早晩日銀は金利を上げる決断をすると予測されるのだ。 もうひとつが「円安」だ。アフターコロナで世界中に急激なインフレが起きたため、アメリカやEUの中央銀行は金利を上げた。世界を見渡せば日本以外はほぼみんな上げた。その余波で、日本だけが金利が低いため、投資資金が海外に流出するようになった。金利差が円安を生んだわけだ。 日本は小麦も原油も海外から輸入する国だから、円安でさらに物価が高くなってしまった。この円安解消のためにも、日銀は利上げに踏み切ることが予測される。 さて、こういった事情で2024年からわれわれが「金利のある世界」を30年ぶりに経験するようになるとしたら、いったいどんな変化が起きるのだろうか? 若い世代にとってはまだ未体験な3つの変化を説明しよう。 ■お金の価値が減少する これまで30年続いたデフレ経済のルールは、「お金を持っていることが強い」というルールでもあった。これは預金も同じ意味だ。仕事でとにかくお金を稼ぎ、それを持っていることが大切な経済だったのだ。 というのも、デフレなので年々、いろいろな物やサービスの価格が下がっていく。今、お金を使わずに手元に残しておけば、来年、再来年はもっとたくさんの物が買えるようになる。お金の価値は年々上がっていくというのがデフレ経済の原則だ。 このルールがこれから大きく変わる。たとえば金利が上がって銀行の定期預金金利が2%になる未来を考えてみよう。 「そんな2%なんてありえない」 と驚くかもしれないが、1990年以前はそれが当たり前の世の中だった。 銀行に預けておくと2%利息がつくということは、手元にお金をもっていると一年後にはその価値が下がるのと同じ意味になる。だから、金利のある世界では多くの人がお金を銀行に預ける。それも普通預金ではなく、まとまった分は定期預金にあずけるようになる。 では、定期預金に預けておけば安心かというと、実はそうでないところがこの話のキモだ。預けた預金は銀行経由で、企業にもっと高い金利で貸し出される。企業はビジネスを行う際にその金利も賄(まかな)わなければならないから、まわりまわっていろいろな物やサービスの価格も高くなる。 かつて江戸っ子は「宵越しの金は持たない」とさっさとお金を使ってしまった。欲しい物があるのだったらさっさと買ってしまったほうがいいという時代がやってくるわけだ。 ■住宅ローンの金利負担が大幅アップ