SNS時代のメジャー・トレード事情
大リーグは、ウェーバー公示なしでトレードが可能な7月末日(米国東部時間午後4時)のトレード期限が終了した。この1週間は毎年、生え抜き人気選手が放出されたり、優勝請負人がやってきたり、悲喜こもごものドラマが繰り広げられるが、ツイッターなどのソーシャルメディアが、普及した昨今はその実情も大きく変わってきた。大リーグにみるSNS時代のトレード事情をレポートしてみたい。 レッドソックスが25日に行ったビクトリーノのトレードは、最近では珍しい球団発表で公になった。放出は既定路線とはいえ、同選手はその日の先発に名を連ね、試合前の練習も行っており、試合開始1時間前に記者席にアナウンスが流れるまで、移籍先や交換要員は表沙汰になっていなかった。こういうケースは最近、極めて珍しくなっている。近年のトレード期限は、米メディアがツイッターに随時、最新情報を投稿して拡散されるため、球団発表よりずっと早く世間が知る所となる。 例えば、直前まで“売り手”ではないとしていたタイガースが“方向転換したのは、29日。「先発プライスを市場に出す意向を固めた」の一報が出ると、ツイッターには「カブス、ドジャーズ、ブルージェイズ、ヤンキース」と接触した4球団の名前があがった末に、翌30日に1対3のトレードでブルージェイズ入りが決まった。 もう1人の先発の目玉、ハメルズは29日の夜の時点で「レンジャーズと合意」の一報が出たが、球団が発表したのは最終日31日の正午。その間、地元メディアは既定事実として「ハメルズ効果」などの特集をバンバン報道した。本人はこの日の午前中にテキサス入りしていたので、発表より遥かに早く移動していることになる。球団発表は手順として踏まれるだけで、ほぼ有名無実化しているのだ。 「最近は、もう皆がリアルタイムで状況を知っている。ツイッターをチェックしていれば、大体のことは分かる。もちろん、全部が正しい訳じゃないが、選手にとってはある程度の心構えができるという意味でいいことだと思う」と、レッドソックス移籍の03年以降、様々な劇的なトレードを間近でみてきたオルティスは言った。04年のガルシアパーラのカブスへのトレードでは、7月31日に敵地でツインズとの試合前、通常のクラブハウスがメディアに解放される時間になっても、ドアは閉まったまま。外で待たされていた記者が直感で「何かあるな」と身構えていたら、本人自身が出てきて、担当記者1人1人と握手を交わしたそうだ。ツイッターなどなかった時代。交渉は水面下で進み球団発表まで情報は極秘にされていた。