パリオリンピック・カヌーに挑む羽根田卓也 5大会連続5度目となる五輪は「新しい形に」
――羽根田選手は現在36歳、キャリアとしてはかなりの経験を積んでいますが、練習内容やトレーニング方法など気をつけていることはありますか? 「練習量は調整しています。体力回復が遅くなったという意識はないんですけど。これだけ長い年数やっていると、関節であったり靭帯であったり、消耗しているところは必ずあるので、そういったところにしわ寄せが来ないように、コーチとディスカッションをして練習量をコントロールするようにしています」 ――羽根田選手のフォトエッセー『Voda 水の声』(報知新聞社)の中に、「若い時は大高慢(だいこうまん)であれ。それが自分を切り拓いてくれた」という言葉がありました。36歳となった今、ご自身の中で自分を後押ししてくれるようなものはありますか? 「そうですね......若い頃の"大高慢"というのは自分主体。自分のやりたいことに対してすごく貪欲で周りを見ないからこそ、(カヌーの強豪国である)スロバキアにも行ったし、いろんなことにもチャレンジできました。競技年数、そして歳を重ねていくごとに、ひとつずつ視野が開けていったし、それ自体はいいことだと思います。 だからこそパリ五輪では"自分だけの五輪ではなくて、いろんな人たちの声を聞いて、想いを感じて挑戦する"という、自分にとっては新しい形をすごく考えています」 後編を読む>>パリオリンピックカヌー日本代表・羽根田卓也が競技を通して学んだ「迷うことの無意味さ」 ■Profile羽根田卓也(はねだ たくや)1987年7月17日生まれ、愛知県豊田市出身。ミキハウス所属。愛称はハネタク。7歳で器械体操を始め、9歳で元カヌー選手だった父と兄の影響でカヌーを始める。中学、高校でもカヌーを続け高校卒業後18歳でカヌーの強豪国スロバキアに単身渡り現地の大学に通いながら鍛錬を積んだ。五輪初出場は2008年北京五輪。2012年ロンドン五輪は7位入賞。2016年のリオデジャネイロ五輪ではカヌー競技でアジア初となる銅メダルを獲得。2020年東京五輪(2021年開催)は10位と悔しい結果に終わった。しかし、5度目の挑戦を決意し、2023年10月29日アジア選手権男子カナディアンシングル決勝で優勝しパリ五輪出場権を獲得。5大会連続5度目の五輪出場決めた。
大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi