補償進むも「説明不十分」の声。紅こうじサプリ健康被害 「半導体景気」夢いずこ。宮城で計画の台湾企業工場白紙に
▽半導体工場誘致、突然白紙に 仙台市中心部から北に約25キロ、宮城県大衡村の国道近くに約19ヘクタールの広い空き地がある。本来ならこの場所で、台湾の力晶積成電子製造(PSMC)の半導体工場が年度内にも着工するはずだった。だが同社は2024年9月、計画を突然白紙に。九州や北海道で活気づく「半導体景気」に期待した自治体や東北経済界に落胆が広がった。新たな工場建設を模索する動きはあるが、先行きは見通せない。 PSMCは台湾北西部の新竹に本社を置く半導体受託生産企業。他社の設計に基づき受注生産を担い、コンピューターの頭脳であるロジック半導体、データの記憶に使うメモリー半導体の両方を手がける。2024年7~9月期決算は売上高116億台湾ドル(14日時点で550億円)。純損益は28億台湾ドル(同136億円)の赤字だった。 ▽トップセールスも計画が頓挫 「これほど大きな建物が本当に村に来るのか」。2024年5月2日、台湾北西部の苗栗県。大衡村の小川(おがわ)ひろみ村長はPSMCの招待で現地の巨大工場を視察し、声を弾ませた。
宮城工場は村井嘉浩(むらい・よしひろ)知事が自ら誘致に奔走した。意識したのは台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県。トップセールスが奏功し、2023年10月、PSMCと、提携するSBIホールディングスが大衡村への工場建設を発表した。 総投資額は9千億円超、稼働後は1200人規模の雇用が見込まれた。2024年3月にはボーリング調査も始まって工事は順調に進むかに見えたが、誘致決定から1年もたたずにPSMCがSBIに提携解消を要請して、計画は頓挫した。 ▽怒り、安堵、受け止め様々 PSMCは主な撤退理由として、日本政府からの補助金支給条件が台湾の法律に抵触する恐れがあると説明。SBI側が実行可能な資金調達計画などを示さなかったとも主張した。 一方、SBIの北尾吉孝(きたお・よしたか)会長はフェイスブックで「本当に信じられない会社だ」と怒りをあらわにし、2024年11月の記者会見では「できれば宮城の土地でやりたい」と新たな提携先を探す考えを示した。ただ県関係者の一人は「リップサービスではないか。誘致のハードルは高い」と冷ややかに見ている。
また、以前から東北で稼働する半導体関連企業の一部には、撤退によって「人材の奪い合いが起きる心配がなくなった」と安堵する声もある。 海外企業との連携の難しさが表面化し、地域経済に混乱をもたらした今回のケース。村井知事は2024年10月の県議会で一連の動きを振り返ってこう述べた。「これを一つの教訓として次にチャレンジしないといけない」