横浜流星、佐野弘樹、宮田佳典が重宝される理由 作り手と俳優の“幸福な関係”とは?
佐野弘樹&宮田佳典が『SUPER HAPPY FOREVER』で提示した幸福な関係
●佐野弘樹&宮田佳典 この2024年は多くの映画ファンが、佐野弘樹と宮田佳典というふたりの演技者の才能に触れたことだろう。そう、五十嵐耕平監督の最新作『SUPER HAPPY FOREVER』(以下、『スパハピ』)で主演を務めているふたりである。 9月末に封切られた本作は、現在も全国各地でロードショー中。ヴェネチア国際映画祭をはじめ、現在進行形で海外の映画祭でも大きな反響を呼んでいる。物語の舞台は伊豆のとあるリゾートホテル。ここで幼馴染みのふたりの青年を中心とした「ヴァカンス映画」が展開していく。ときには心が踊る、またときには胸が締めつけられる、そんな物語がーー。本作は2024年の「傑作」との呼び声も高い。いますぐに劇場に走ることをオススメしたい。 そんな本作は、俳優である佐野と宮田が五十嵐監督に声をかけたところからすべてがはじまっている。演じているのもそれぞれ“佐野”と“宮田”というキャラクターであり、個々のパーソナリティが役に反映されていたりもする。これもまた作り手と俳優の幸福な関係のかたちのひとつだ。 佐野はNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『舞いあがれ!』(2022年度後期)でムードメーカーな航空学生を演じていたのが記憶に新しく、映画では『TOCKA タスカー』(2022年)や『茶飲友達』(2023年)で重要な役どころを担ってきた。公開中の石井裕也監督による『本心』や、同監督による前作『愛にイナズマ』(2023年)でも出番はかぎられているものの印象に残っていた。彼の芝居がもっと見たいと思っていたところ、『スパハピ』が公開されたわけだ。 宮田は『スパハピ』以外にも、2024年は『悪は存在しない』や『STRANGERS』といった出演作が公開されていて、年明けには彼が長年続けてきたボクシングをモチーフにした『Welcome Back』が公開される。特技を持った俳優というのはやはり強い。これまでにも彼は『春に散る』(2023年)をはじめとしたいくつものボクシング映画に出演し、作品のリアリティを支えてきたが、今回は“最強のボクサー”として作品の中心に立つことに。『スパハピ』でジャブを打っていた宮田の物語が、ここに繋がってくるのだ。 こうして俯瞰してみると、両者ともに作家性の強い作品に重用されつつ、佐野のように国民的ドラマでも活躍し(ちなみに宮田は2018年度後期NHK朝ドラ『まんぷく』で重要なポジションを担っている)、豊かなキャリアを築いているように思える。が、そう思っているのは私たち視聴者/観客の話で、演技者である彼らは違う。次から次へと素晴らしい作品が世に放たれ、それらの作品ごとに、さまざまな俳優たちのパフォーマンスが収められている。待っているばかりでは、出番はやってこない。だから自分たちのほうから動く。それが佐野と宮田だ。 結果として彼らは『SUPER HAPPY FOREVER』というタイトルに相応しい、作り手と俳優の幸福な関係を築き上げた。そして私たち観客は、この“SUPER HAPPY FOREVER=永遠に超幸せ”な読後感を受け取ることができている。作り手と俳優の関係に着目してみるのも面白い。
折田侑駿