元日本代表DF丹羽大輝がサッカーゴールを贈る理由「ゴールがあれば子供たちはボールを蹴る」【後編】
2021年よりスペインでプレーする元日本代表DF丹羽大輝(38)が、スペイン4部に当たるアレナス・ゲチョでのシーズンを終え、スポーツ報知のインタビューに応じた。35歳での欧州初挑戦から約3年目のシーズンを終え、何を思うのか。後編ではスペインで学び、感じたことをどう日本に還元していくのかを語った。(前後編の後編 取材・構成=金川誉) スペインでの3シーズンを終えた丹羽は、来季もアレナス・ゲチョとの契約を延長し、スペインでのプレーを続けることになった。4季目のシーズンを前に、日本で過ごすオフ期間は長くない。しかし、自身の経験を、日本サッカーに還元していきたい、という思いが常にあるという。 「スペインでは、100年近い歴史を持つラリーガ(1929年創立)など、サッカーに全国民がお金と時間を注いできて、積み上げてきたものをすごく感じます。日本はJリーグができて30年。そこに追いつこうと思って、日本は今、急行で頑張っていると思います。でも急いで行くと、がくんと落ちる時がくるかもしれない。少しずつ積み上げて、上がっていく。それは本当の意味での積み上げに変わるんじゃないか、と思っています」 そのために、丹羽がオフの期間に日本で行う活動が、Jクラブの下部組織での講演だ。オフには自身の人脈をたどり、かつて所属したクラブなど複数クラブを訪問し、自身の経験を子供たちに無償で伝える予定。スペインで暮らし、プロとして戦う中で感じてきたものを少しでも伝えることで、子供たちの成長と、日本サッカーの発展に少しでもつなげたい、と考えている。 「僕がスペインでプレーヤーとして感じたことを、伝えていきたいと思っています。加えて、僕はスペインでラリーガから子供たちのサッカー、5部、6部などの試合、練習も見ています。育成年代でどんな指導をしているのか、など色々と感じることがある。どうやって今のラリーガを頂点としたスペインサッカーが形成されてきたのか、すごく興味があって、勉強しているところです。そんなところも日本の子供たちや、指導者の方々にも知ってもらいたいんです」 もうひとつが「NIWA Goal Project」だ。以前は「NIWA Shiba Project」と称し、全国に芝のピッチをつくる活動を行ってきたが、今年からサッカーゴールを寄贈するプロジェクトをスタートするという。 「もうひとつは環境作りです。ゴールを寄贈するサッカー教室をしたいなと。新潟の能登や、熊本の益城町、広島、できるだけ多くで来年以降もやりたいな、と。日本で生活している時は、普通に生活していると、サッカーは人生に入ってこない。でも、スペインは違う。テレビをつけても、町を歩いても、サッカーが勝手に入ってくる。日本もそうなれば、サッカーのレベルがぐんと上がっていくんじゃないかと思っています。単純にサッカーゴールがあれば、子供たちはボールを蹴るじゃないですか。スペインにはあちこちにグラウンドがあって、ゴールがあるんですよ。僕ができることってそれぐらい。地道なことしか今はできない。将来的には、地元にゆかりのある選手を呼んだりとか、地元企業とコラボしたりとかして、全国で活動していくことができたら。サッカーっていいねとか、サッカー選手ってすごいねって思ってもらって、いろんな人と協力してやっていければ。そんな活動を、僕が率先してやっていこうと思っています」 家族でスペインに渡り、プレーを続けて生活する中で、多くを感じ取ってきた丹羽。いつか日本がスペインに追いつき、追い越すための「本当の積み上げ」へ向け、日本での活動も続けていく。その目は、常に未来の日本サッカーへと向いている。
報知新聞社