特別展「梅津庸一 クリスタルパレス」が国立国際美術館で開催。00年代からの仕事を総覧
美術家・梅津庸一(1982~)の、2000年代半ばより始まる仕事を総覧する大規模個展「梅津庸一 クリスタルパレス」が大阪・中之島の国立国際美術館 で開催される。会期は6月4日~10月6日。 梅津庸一は1982年山形県生まれ。東京造形大学絵画科卒業。ラファエル・コランの代表作《フロレアル》を自らの裸像に置き換えた《フロレアル(わたし)》(2004~07)や、同じく自身がモデルとなり、黒田清輝の《智・感・情》(1897~90)を4枚の絵画で構成した《智・感・情・A》など日本の近代洋画の黎明期の作品を自らに憑依させた自画像をはじめとする絵画作品を発表し注目を集める。ほかにも私塾「パープルーム予備校」(2014~)の運営、自身が主宰する「パープルームギャラリー」の運営、テキストの執筆など活動領域は多岐にわたってきた。 本展は、こうした梅津の活動の軌跡をたどる試みとなる。梅津が今回の展覧会タイトルに選んだ「クリスタルパレス」は、1851年にロンドンでの万国博覧会に登場し、後には巨大な温室を含む複合施設として転用された鉄骨とガラスのパビリオンのことだ。美術史を深く参照しつつ、多種多様な仕事ぶりを「花粉」に例えてきた梅津のこれまでの足跡とも重なり合う。 展覧会は5章構成。第1章「知られざる蒙古斑たちへ」では、「この国で美術家として生きること」の可能性を根本から問いなおそうとした梅津が、ラファエル・コランや黒田清輝といった「美術」の始祖を参照しつつ制作した初期の代表作や大量のドローイングを展示。 第2章「花粉を飛ばしたい!」は、この国においては美術のみで身を立てることが難しいなか、美術という領域において「私有地」を確保していこうとする梅津の試みを中心に紹介。相模原市の自宅で立ち上げた私塾「パープルーム」や、生活と同居する美術への問いについて展示する。 第3章「新しいひび」は、2021年に滋賀・信楽に移住し、陶芸に取り組みながら制作意欲を取り戻そうとした梅津の軌跡と、絵画との連関性について紹介。 第4章「現代美術産業」は、陶芸と向き合うなかで制作を下支えする「インフラ」への意識を強めた梅津が、版画技法を用いて実験をくりかえし、広い意味での制作をとらえようとした作品を展示。 最後となる第5章「パビリオン、水晶宮」では、過去と現在、産業と芸術、プロとアマ、「美学と政治」といった線引きを曖昧にし、引いては国立美術館での展示という本展そのものにも批評的観点で臨む梅津の新たな試みを提示する。