今季限りで退任した阪神の岡田彰布前監督＝３日、横浜スタジアム（松永渉平撮影)

阪神の岡田彰布監督が、クライマックスシリーズ（CS）ファーストステージ敗退をもって退任した。昨季は日本一に輝いた監督である。11月で67歳。体調面の不安もあったのかもしれないが、僕の中では来季も続投という思いがあっただけに、2年での退任は驚きであった。 【写真】名球会ブレザー授与式で岡田監督から花束を受け取る藤川球児氏 岡田監督は就任前から評論家として「あのメンバーだったら勝てる」と確信していた。「普通にやる」という言葉通りの采配で、昨季に38年ぶりの日本一へ導いた手腕は見事だった。今季はリーグ連覇こそ逃したが、最後まで優勝争いを繰り広げた。決して悪くないはずだが、岡田監督からすれば、思い通りにいかなかったシーズンということになるのだろう。 あえて、敗因を挙げるとすれば、「補強」だったのではないか。強いときほど補強すべきだ、というのが僕の持論。それだけに何度考えても、もったいなかったなと思ってしまう。 ノイジー、ミエセスの外国人野手2人を今季も残留させたのは、岡田監督の中で若手が成長している手応えが大きかったのだろう。あえて補強しなかったのかもしれない。ただ、ノイジー、ミエセスとも今季はチームに貢献できなかった。巨人のリーグ優勝は、15勝を挙げた菅野の復活が大きかっただけでなく、途中入団のヘルナンデス、モンテスの野手2人の貢献度が大きかったと思っている。 常勝軍団を作るには高いレベルでの競争が必要である。レギュラーが安泰と思ったときには必ず隙ができる。主力組を脅かし、押し出すだけの選手が出てこなかったことも連覇を逃した一因といえるだろう。 岡田監督は12球団で唯一、選手に厳しいことをはっきりといえる監督であった。若い監督は選手のフォローはするし、褒めることはできるが、選手に気を使ってしまうケースもある。悪いことは悪いとはっきり言える指揮官が、めっきり少なくなった。 阪神の藤川球児新監督には岡田監督のそうした部分をぜひ引き継いでほしいと思う。チームは家族であり、本当の家族であれば、おのずと叱ることはできるはずだ。岡田監督は今後、フロント入りするという。阪神はいいな、うらやましいなと思ってもらえる、魅力あるチームづくりに尽力してほしい。それができる人物だと思っている。（野球評論家）