平埜生成、『虎に翼』でどんな“翼”を広げるか 『カムカム』に続き“温もり”を与える存在に?
『カムカム』榊原誠役はお茶の間に“温もり”を与える存在に
『カムカム』の愛称で親しまれた同作は、100年にわたる母娘3代の物語を描いたドラマだった。令和に誕生した名作といっていいだろう。平埜が演じた榊原誠は3人目のヒロイン・ひなた(川栄李奈)のパートで登場し、「仕事」や「恋愛」をテーマにしたサイドストーリーを展開させた。ここで平埜が体現していたのは、榊原の持つ“優しさ”と“誠実さ”。彼とヒロインの温かな共闘ぶりに、お茶の間にいるこちらまで胸が温かいもので満たされたのを覚えている。いや、正確にいえばあの温もりはまだ残っている。だから『虎に翼』の汐見にも、そのような役どころを期待してしまうのだ。 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 虎に翼 Part1』(NHK出版)にて平埜は出演に際し、「この作品に出てくる人たちは、みんな『翼』を持っていると思います。愛という翼、夢という翼、法律という翼、性別という翼……。脚本を読みながら、そんな『翼』について考えていました! ぼくの演じる汐見さんは、どんな『翼』を広げるのでしょうか!」とコメントしている。短いものではあるが、作品に対する彼の客観的な視点が感じられる。脚本の読み方は演じ手それぞれだというが、キャラクターの個性を“翼”だと解釈することでこそ見えてくる作品像というのもあるのだろう。 小林薫、木場勝己、さらには滝藤賢一、平田満といった演劇畑で俳優のキャリアをスタートさせたベテラン勢が繰り出すハイレベルなパフォーマンスを前に、若き演技者・平埜生成はどう立ち向かうのだろうか。『カムカム』以降、戸塚純貴と共演した『VAMP SHOW ヴァンプショウ』(2022年)をはじめ、今年は主演作『兵卒タナカ』や『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』など、平埜もコンスタントに舞台に立ち続けている。彼が先輩たちの前で広げてみえる“翼”とは、いったいどんな色の形をしたものなのだろうか。
折田侑駿