エプソンの小型PC-98互換機「PC-286U」
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、エプソンからPC-286Vと共に登場したPC-98互換機の3.5インチモデル、PC-286を取り上げました。 【画像】PC-286Vの広告とデザインは同じですが、PC-286Uの広告ということで左ページの機種がPC-286Uになっています。右ページの仕様部分も、PC-286Uバージョンになっていました。 1987年4月から始まったエプソンのPC-98互換機発売ですが、その第2陣として同年9月11日に発表されたのがPC-286VとPC-286U、そしてPC-286Lでした。このときは、これらの機種を公開しただけでなく、“今回発表の機種にはBASICを搭載して互換性をほぼ100%にした”こと、“従来のユーザーにも6,000円でBASICのROMを提供する”こと、“NECがOSに組み込んだガードを解除するプログラムが付属したこと”も合わせて発表されています。その3機種のなかから今回は、PC-9801UV21の対抗となるコンパクトな機種、PC-286Uを取り上げました。 スペックとしては、CPUに動作クロック10MHzのV30(μPD70116)をノーウェイトで使用。これにより、PC-9801UV21と比べて速度が約10%ほど高速になっていましす。もちろん、動作クロックを8MHzに切り換えることも可能で、稼働中に変更することができるのもPC-286V譲りでした。 そのほかの仕様はPC-9801UV21とほぼ同じで、640×400ドット4096色中16色を2画面、メインメモリは640KBを搭載。FM音源3声、PSG音源3声の、いわゆる26K音源も内蔵しています。 筐体のサイズは、幅が約39cm、奥行き約35.5cm、高さが約8.5cmでした。このサイズの中に、3.5インチの20Mbytesハードディスクを搭載できることもウリとなっています。実際に中を開けて見てみるとわかるのですが、かなり手狭な印象を感じるかもしれません。 背面には、PC-9801UV21と同じく拡張スロットが2つ用意されていますが、PC-286Uは本体内部にメモリ増設用のメモリボードと、ハードディスク増設のためのハードディスクインターフェースを搭載しています。単純に説明するならば、PC-9801UV21の拡張スロット2つに対して、PC-286Uは拡張スロットを事実上4つ装備しているとも言えるのでした。これにより、拡張性という面でもPC-9801UV21に水をあけ、より有利な戦いを展開していくことになります。 そして最大の特徴が価格で、FDDモデルのPC-286U STDが248,000円、ハードディスクを内蔵したモデルのPC-286U H20が393,000円でした。PC-9801UV21が318,000円ということを考えると、それよりも2割以上安く買える計算になります。 もちろん、市場では大幅に値引きされて販売されることが多いので、当時の広告を色々と調べてみました。一例ですが、とある通信販売のお店では本体とモニタ、漢字対応プリンタのセットで、PC-286Uが265,000円、PC-9801UV21が285,000円とありました。他の広告も見てみたのですが、全般的にPC-9801UV21がおおよそ2万円~5万円ほど高い価格で販売されていたようです。とはいえ、本機の発売直後にNECはPC-9801UX21を市場に投入しているので、結局はそちらとの価格競争になっていきますが……。 この時代、NECは自社が販売するMS-DOSなどのプログラムに、動いている環境が自社製ハードウェアかどうかを確認するプロテクト、いわゆるエプソンチェックを仕掛けていました。チェックに引っかかると、MS-DOSであれば起動メッセージが表示された直後にリセットがかかってしまうということになります。これを回避すべく、エプソン側はエプソンチェックを回避するプログラムとなる「ソフトウェア・インストレーション・プログラム(SIP)」を供給していました。これを使ってパッチを当てることで、プロテクトを回避して通常通りにソフトを運用することができるようになります。 筆者も、PC-286シリーズやPC-386シリーズなどを入手した際に起動チェックをしようとしてゲームディスクを挿入すると、すぐにリセットがかかって立ち上がらないという事態に見舞われることがよくあるのですが、エプソンチェックが原因ということをすっかり忘れてて、気づくまでしばらく時間がかかることもありました。 この後、エプソンは更なる新機種を5インチ、3.5インチ共にリリースしていくのですが、それはまた次の機会に取り上げることとします。
AKIBA PC Hotline!,佐々木 潤