ついに千円札の発行量も減少に、キャッシュレス決済の普及やタンス預金の縮小で紙幣は本当になくなるのか?
■ ついに減り始めた一万円札とタンス預金 【ここ2年ほどキャッシュレス決済額の伸びが加速】 キャッシュレス決済が普及しても、千円札は長らく安定的な増加が続いたが、2024年に入り、ついに減少傾向へ転じた。コロナ禍の影響もあり、紙幣の使用を回避する動きが生じているのだろう。 特にここ2年ほど、キャッシュレス決済額の伸びが加速しており、個人消費に占める割合は4割弱に達した。クレジットカードの利用額が拡大しているほか、コード決済も急速に普及している。 【タンス預金縮小の影響】 紙幣発行枚数を算出すると、千円札のみならず一万円札もこのところ減少傾向にある。全体の紙幣発行高の減少は、金額としては当然ながら一万円札減少の影響が大きい。 一万円札の減少については、千円札と同様、決済需要の縮小も影響しているとみられるが、保蔵需要、いわゆるタンス預金の縮小も影響している可能性がある。 タンス預金の規模を試算すると、2024年1~3月期平均で65.8兆円程度あるとみられる。紙幣発行額全体の54%程度を占める。 タンス預金は長らく増加基調を辿ってきた。特に2000年代前半と2010年代後半に膨らんだ。2000年代前半にタンス預金が膨らんだのは、ペイオフ解禁が主因であろう。 一方、2010年代後半のタンス預金増加は、2015年の相続税税制改正、2016年のマイナンバー制度開始、そしてマイナス金利導入といった政策要因が重なったためと考えられる。 だが、タンス預金は2022年頃から伸びが鈍化しており、2023年10~12月期に前年比▲0.7%、2024年1~3月期に同▲0.3%と2期連続で減少している。前年比減少は2000年7~9月期以来、約23年ぶりのことだ。おそらく、家計が物価高騰に直面して、タンス預金を取り崩して決済に回す動きが生じた可能性が考えられる。 また、そもそも物価高騰により、タンス預金の実質的な価値、言い換えれば価値保蔵能力が落ちている影響もあろう。