電車の遅延で年間「億単位」の経済損失!?なぜそんなに大きい額になるの?
通勤や通学、遠方へのお出掛けなど、電車はさまざまなシーンで多くの方に利用されています。非常に便利な交通機関ではありますが、遅延に巻き込まれて、予定が大幅にずれた経験のある方は少なくありません。 電車は一度遅延すると、電車を利用する多くの方の予定に影響するだけではなく、電車を利用する方々にとっての経済的損失にもつながります。 今回は、電車が遅延した場合に、利用している方へ発生する経済的損失や、なぜ経済的損失が発生するのかなどについて解説します。
電車の遅延が原因の経済的損失とは
国土交通省から、2018年度における東京圏における電車の遅延についてまとめた『東京圏の鉄道路線の遅延「見える化」』が公表されました。公表された資料によると、10分より短い遅延の原因として最も多いのは、電車を利用する方の乗り降りに時間がかかってしまったことが挙げられます。 30分以上の長い遅延だと、自殺や線路内の立ち入りなど、突発的な要因が最も多い割合となりました。 電車が原因の経済的損失は、さまざまな原因で起こる電車の遅延を理由に、時間的・金銭的損失を乗客が受けることを指します。例えば、電車の遅延によって利用していた電車を変更して、追加料金を支払って目的地へ向かうことも、経済的損失のひとつです。 ■経済的損失の金額 東京都で平日に起こった電車の遅延による経済的損失の金額を、実際に試算してみます。今回は、国土交通省が公表している資料を基に、条件を表1のように設定しました。 表1
※参照サイトより筆者作成 表1の条件により計算すると、2018年度における1年当たりの1時間遅延数は合計7.2日、30分遅延は合計44.4日、10分遅延は合計88.8日です。1時間遅延の1年間の経済的損失は、一人当たり30.8円/分×60分×7.2日=1万3305.6円となります。 同様に計算していくと、遅延30分の経済的損失は1年間で4万1025.6円、遅延10分だと2万7350.4円で、一人当たりの年間経済的損失の合計は8万1681.6円です。1万人の経済的損失として考えますので、8万1681.6円×1万人となり、今回の条件では、東京都における2018年度の年間の経済的損失は、8億1681万6000円と考えられます。 ■なぜ大きな経済的損失となるのか 億単位に及ぶと考えられる経済的損失が発生する一因としては、電車が遅延すると、迂回する方が出てくることが挙げられます。 公益財団法人鉄道総合技術研究所によると、電車の遅延により迂回(うかい)を選択した方の35%が、追加で料金を支払っていました。つまり、電車の遅延にあった方の3分の1ほどは、無料の振替輸送などを利用せずに金銭的損失を被っていることになります。本来不要な料金を少なくない方が支払っていることは、経済的損失の金額が大きくなる一因といえるでしょう。