目澤秀憲が教える世界のトッププロの計測データの“本当の生かし方”【目澤秀憲・スウィング3.0 #23】
松山英樹の21年マスターズ優勝をサポートした目澤秀憲に、レッスン技術に造詣が深いライターDが、最新スウィング理論について話を聞いていく連載「みんなのスウィング3.0」。今回は「計測データは最良のコーチになり得るか」について考えた。
D 今までは、プロやコーチが伝えたいことと、それを受け取るゴルファーの間に不完全、不正確な情報の伝達があって、本来はシンプルなはずの理論が、難しく感じられるケースがよく起きていたのではないか、という話題でした。 目澤 そもそも、ビデオカメラすらない時代は、プロの感覚をどうやって言葉にして伝えるかという苦労があったのだと思います。 D それが今は、計測データという”共通言語”があって、伝えたいことが素直に伝わりやすい環境にはなってきていますね。 目澤 確かにデータ自体はウソをつかないので、定期的にスウィングをモニターしながら、データがよくなるやり方を追求していくというのは、現代ならではの効率的なアプローチだと思います。ただ、データが良くなることが「すべて」かというと、そうとも言い切れないところが難しいところですね。たとえば以前、ショーン・フォーリーがタイガー(・ウッズ)のコーチをしていたときに、データ(効率)を求めて「スタック&チルト」的なスウィングに変更しましたが、それがひざや腰のケガの遠因になりましたよね? D ほぼ左1軸で、ダウンスウィングの右のサイドベンドを強くしてドローを打っていましたね。タイガー自身が、「ああいう打ち方はもう難しい」と言っています。 目澤 これはゴルフに限らないと思うのですが、その人が一番気持ち良くできる動きが、その人にとって一番良い動きなのだと思います。ただし、気持ち良い動きと、データが良くなる動きが同じとは限らないわけで、どちらを優先すべきかということを相談する相手が必要なのではないかと思います。 D それが現代におけるコーチの役割だと。タイガーもクリス・コモのアドバイスのおかげで、体の負担が少なく、しかも効率の良い動きを取り戻しました。 目澤 今、PGAツアーのプロたちは、調子が良いときほど詳細なスウィングのデータを計測して、それを保存しておくということをやっています。 D 調子が悪くなったときに再度データを取って比較すれば、何が原因なのかが割にすぐにわかるということですね。 目澤 それが一番のメリットですが、結局、調子が良かったときの感覚を突き詰めていくというのが、究極のスウィング改善法なのではないかと思うんです。何か新しいことを試すにしても、良いときの感覚を消さないでできる動きかどうかが大事で、もしそうなら、続けてやってみる価値はあると思います。 D 逆に良い感覚が消えてしまうような動きなら、5~6球も打てばわかるはずなので、すぐにやめたほうがいい(笑)。 目澤 上達意欲が強いアマチュアのほうが、”最新理論”という響きに弱く、気持ち良くなくても新しい動きにこだわってしまう傾向はあるので、それは気を付けたほうがいいかもしれませんね。 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月30日号「みんなのスウィング3.0 Vol23」より
週刊ゴルフダイジェスト
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