阪神・淡路大震災でアスベストを吸引、肺がんを発症した男性を初の労災認定 神戸東労基署
阪神・淡路大震災で倒壊した建物などから飛散したアスベスト(石綿)を吸引し、肺がんを発症したとして、労災申請をした男性が、神戸東労働基準監督署から2023年度に労災認定を受けていたことが25日、分かった。支援団体によると、震災で生じた石綿を原因とする肺がんが労災認定されるのは初めてとみられる。 【写真】長い潜伏期間 ボランティアも健康被害か 大量飛散、環境基準の25倍 アスベストは繊維状の鉱物の総称。耐熱性や断熱性などの機能があり、阪神・淡路当時は多くの建物に使われ、倒壊や解体、がれきの撤去時に飛散したと指摘されている。吸い込むと数十年間の潜伏期間を経て、中皮腫や肺がんなどを発症するリスクがある。 関係者によると、男性は震災当時、神戸市内で暮らし、会社へ単車で通勤していた。業務で石綿を扱うことはなかったが、震災直後、男性を含めた従業員は自社商品の納品先を訪ねて被災地を回ったほか、男性は約3年間、主に神戸・阪神間で営業職として働いた。 男性は在職中にがんを患い、ここ数年で肺がんが再発。石綿を吸引したことを示す医学的根拠が確認されたという。神戸東労基署が「間接的に石綿にさらされる作業をしていた」として労災認定し、男性は今年、80代で亡くなった。 支援団体のNPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」(同市中央区)の西山和宏事務局長は「間接的に吸い込んでも発症するほど飛散していたことを示している。石綿関連疾患は長期間潜伏する。一般市民やボランティアなど被災地に関わった多くの人に注意が必要になりつつある」と強調する。 また、復興関連作業に従事した大阪市の建設会社の従業員が中皮腫を発症し、淀川労基署が22年度に労災認定していたことも分かった。阪神・淡路の建物解体や復旧作業に携わり、中皮腫を発症して労災や公務災害に認定された人は7人目となった。(千葉翔大)