ジョージア、親欧米路線放棄 「28年までEU加盟交渉凍結」発表 対露接近も
欧州連合(EU)から昨年末に「加盟候補国」の地位を付与された南カフカス地方の旧ソ連構成国、ジョージア(グルジア)のコバヒゼ首相は28日、同国が2028年までEU加盟交渉を凍結することを決定したと発表した。EUがジョージアを「不当に批判」していることを受けた措置だとしている。タス通信などが伝えた。発表を受け、首都トビリシでは大規模な抗議デモが発生し、治安部隊との衝突に発展した。 【写真】記者会見するジョージアのコバヒゼ首相 ジョージアは08年にロシアの軍事侵攻を受けて以降、反露を「国是」とし、欧米諸国との関係強化を進めてきた。しかし、コバヒゼ政権は今回の決定で事実上、親欧米路線を放棄する方針を示した形。今後、ジョージアを巡る政治情勢が流動化しそうだ。 ジョージアでは今年、コバヒゼ政権の与党「ジョージアの夢」が、外国から資金提供を受けて活動する団体を規制する「反スパイ法」と、性的少数者(LGBTなど)の権利を制限する「LGBT規制法」を可決。両法は類似した法律がロシアで施行され、政治・言論弾圧の手段として使われていることから、EUは「夢」の強権化を批判し、加盟手続きの一時停止を発表した。EUは反スパイ法を巡る抗議デモを政権側が弾圧したことも非難した。 EUはさらに、「夢」の勝利が発表された今年秋のジョージア議会選についても、「夢」による開票不正など「多数の重大な選挙違反」が起きたとして、再選挙を行うよう求めていた。 コバヒゼ氏は28日の記者会見で、EUが一連の批判によりジョージアに「風評被害」を与えていると主張。「28年まで(EUへの)加盟交渉の開始を議題にせず、EUからの補助金も受け取らない」と表明した。コバヒゼ氏は一方で、「ジョージアは28年末までにEU加盟交渉を再開し、30年にEUに加盟する用意がある」とも主張した。 「夢」は12年の政権獲得後、親欧米路線を掲げる一方、近年はウクライナ侵略に伴う欧米主導の対露制裁に参加しないなど親露的な傾向も強めていた。「夢」の創設者でありロシアで財を成した大富豪のイワニシビリ元首相は、ジョージア国内の親露分離派地域である南オセチアとアブハジアを巡る領土問題の解決を視野に、ロシアへの接近を模索しようとしているとの観測も出ている。 一方、プーチン露大統領は28日、訪問先の中央アジア・カザフスタンでの記者会見でジョージア情勢に言及。ロシアとジョージア指導部に接点はないとしつつ、ジョージアが反スパイ法の制定などで「自身の観点」を守ろうとしたことは「勇敢であり、驚かされた」と評価した。(小野田雄一)