『虎に翼』が盛り上がっている今こそ観たい! 脚本家・吉田恵里香の手腕が光る3作品
『虎に翼』(NHK総合)第21週のサブタイトルは「貞女は二夫に見えず?」。「貞淑な女性は夫と死別あるいは離婚しても、再び他の夫を持つことはしない」という意味だ。 【写真】岡田将生&伊藤沙莉の仲良し“カップルチェキ” 夫・優三(仲野太賀)の死から約10年、交際相手の航一(岡田将生)からプロポーズを受けた寅子(伊藤沙莉)。再婚するか否かに加え、名字変更問題に直面する中、轟(戸塚純貴)から恋人の遠藤(和田正人)を紹介される。 現代でも議論の最中にある同性婚や夫婦別姓に切り込む今週は、エンタメと社会性を両立させてきた脚本家・吉田恵里香の手腕が大いに発揮されそうだ。ここで改めて、吉田が過去に手がけた秀作を紹介したい。
『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』
2020年10月期に放送された『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)は、「ガンガンpixiv」にて連載中の豊田悠による人気コミックが原作。童貞のまま30歳を迎えたことで「触れた人の心が読める魔法」を手に入れた冴えないサラリーマンの安達(赤楚衛二)が、社内一のイケメンで仕事もデキる同僚・黒沢(町田啓太)が自分に好意を寄せていると知ることから始まるラブコメディだ。 ドラマは深夜帯の放送ながら国内外で話題を集め、社会現象を巻き起こすほどの大ヒットに。2022年には続編となる劇場版も公開されたほか、タイでもドラマ化された。 『チェリまほ』の愛称で今なお多くの人に愛されている本作の魅力は、赤楚と町田の好演もさることながら、登場人物たちの感情の機微を丁寧に掬い上げる温かなストーリーにある。自己肯定感が著しく低く、何をするにも「自分なんか」と端から諦めてしまっていた安達。一方、完璧に見える黒沢も周りから妬まれることが多く、「顔だけが取り柄」と言われないように人一倍努力してきた過去があった。そんな2人が互いの心に触れ、自分を肯定できるようになるまでの過程が繊細に描かれる物語に誰もが夢中になったのだ。 また、黒沢が家に泊まった安達の寝顔を写真に収めておけばと後悔しつつ、「さすがにそれはアウトか」と自分にツッコミを入れたり、会社の飲み会における王様ゲームで安達と黒沢がキスさせられそうになった時に後輩がさらっと「王様ゲームとか、マジ時代錯誤すぎて引くんスけど」と指摘したりと、倫理的にアウトなことに関してしっかりと台詞でNOを突きつけているところも特筆すべきポイント。吉田は視聴者にどこまでも誠実で、細かい部分にまで気を配る。そういうところが多くの人に評価されている所以なのだろう。