手描き友禅追い求めて半世紀 長野県安曇野の節郎美術館で池野陽子さん記念展
手描き友禅師・池野陽子さん(78)=長野県安曇野市穂高有明=の研さん世界と和文化伝承の営みを紹介する「池野染色工房50周年記念展~未来へつなぐ手描き友禅・染めの世界」が11日、安曇野髙橋節郎記念美術館(同市穂高北穂高)で始まった。工房を主宰し50年となる節目を教え子と飾った。14日まで。 松本市清水中学校3年生の菅原柚月さんなど10~60代の教え子5人と自身が手掛けた着物合わせて12点を披露した。着物のデザインを書き起こす図案の作成に始まり、反物を着物に仕立てるまで、下絵や色挿し、地染め、金彩加工など数々の工程を踏む手描き友禅染の大作や、型染めを並べた。 池野さんは浜松市出身。伝統ある京都に5代続く友禅作家に師事し、住み込み3年の修業を経て独立した。家族の療養や介護のため約40年前に、自然豊かな県内へ移住後、染めに加えて着付けや茶会も取り入れた文化振興と後進育成に力を注いでいた。教え子は70人を下らない。 安曇野市三郷小学校5年生の頃から習う竹本凜佳さん(26)は、春の喜びをうたった万葉集の一首に発想した訪問着を出品。地色の青磁色に映えるタンポポの絵柄は、江戸時代の描き方にこだわった。「染めを通じ、古典文学をはじめ自然や周囲の人たちなどさまざま興味や意識を向けるようになった」と話す。池野さんは「恵みに気付き、感謝する心の豊かさを体得する日本文化の奥深さ、楽しさにより多くの方に触れてほしい」と願う。 入場無料。午前10時~午後4時(14日は3時)。抹茶の振る舞いや型染め体験を催している。12日午後3時から音楽ライブもある。問い合わせは同美術館(電話0263・81・3030)へ。
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