超高級車の華麗なる進化は凄かった 新型ベントレーコンチネンタルGTの奥深さとは?
ドラマティックな走り
もっとも、実際に試乗してみると、新型コンチネンタルGTスピードはそんな高性能振りが信じられないほど扱い易く、快適だった。 新たに2チャンバー方式のエアサスペンションと2バルブ方式のダンパーが与えられた足回りは、試乗車がハイパフォーマンス版のスピードだったにもかかわらず、従来型をしのぐしなやかさを披露。路面からゴツゴツという振動を拾わないだけでなく、ボディーを穏やかにフラットな姿勢に保って乗員の疲労を最小限に抑えてくれる。ここまで質の高い乗り味を実現するうえでは、ボディー剛性の向上もなんらかの形で関係しているはずだ。 新開発のパワートレインは低回転域からでも素直な反応を示すとともに、トップエンドに向けてドラマチックとでもいうべきパワー感を発揮するのだが、気難しさは一切なく、最高出力800psに迫るこのパワートレインを自在に操る歓びをドライバーは体験できるだろう。 なお、新型コンチネンタルGTは史上初めてクーペとコンバーティブルの2タイプが同時発売されるとともに、試乗会場にも2台が揃って用意され、自由にステアリングを握れた。 そこでコンバーティブルの印象を端的に紹介すると、これまではクーペに及ばなかったボディー剛性がほぼ遜色のないレベルまで改善された結果、クーペに匹敵する質の高い乗り心地と正確なハンドリングを得ていることに驚かされた。また、場所によっては標高2000mを越えるアンデルマット周辺は、9月下旬とはいえすでに日本の冬と変わらない寒さだったが、シートヒーターやネックウォーマーなどの快適装備が充実していることもあり、オープンでも快適なドライブが堪能できたことをあわせて報告しておきたい。 ところで、今回の試乗会会場では、ベントレーの電動化計画であるビヨンド100が事実上、破棄されるとともに、当初は完全電動化を実現するとされた2030年を迎えてもプラグイン・ハイブリッドモデルを継続生産する可能性があることが示唆された。 これは、EVの販売台数が思ったほど伸びていない現在の市場環境を反映した判断だろうが、グラントツアラーをモデルラインナップの中心に据えるベントレーにとっては、バッテリー技術がさらに進化してEVの性能が飛躍的に改善されるまでは、航続距離が長く、またエネルギーの再チャージが短時間で済むプラグイン・ハイブリッドモデルの販売を継続することが理に適っているように思う。 一般的にはネガティブに受け止められかねないメッセージだが、ベントレーというブランドにとっては重要な判断だろう。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)