和田秀樹が教える「60歳から頭がよくなるコツ」 話が上手な人とそうでもない人の決定的な差
けれど残念なことに、日本の教育はこの「まとめる力」を伸ばすことにあまり重きを置いていません。外国では長い文章や論文を読み、その内容をまとめるという教育が行われているのに対し、日本では登場人物の心情理解をしたり、自分なりの感想を述べたりすることを求められます。なにもわざわざまとめる力を鍛えなくても、読解力は自然に身につくものと思われているのです。 「自分にはまとめる力くらいあるよ」と思ったとしても、いざ話そうとするとうまく言葉にならない、言いたいことが整理できない、といった具合になるのであれば、それは結局のところ、まとめられていないということなのです。けれど、このまとめる力も、少し意識を変えてみたり、日々のなかでトレーニングをしてみたりすることで、たいていの人が身につけることができます。結局ここでも大切なのは、ちょっとした技術と意欲なのです。
■わかった気になるのと、実際に理解して内容をまとめられるのとは別問題 まとめる力をつけるために効果があるのは、さまざまな情報に触れたときに、その内容を要約してみること。「なんとなくわかった」で終わらせないということです。本や文章を読んだり、人の話を聞いたりしたときなどに、頭ではわかった気になっても、仮に「では、今の内容をまとめてください」と言われたら、戸惑ってしまう方が多いのではないでしょうか。「わかった気になる」のと、「実際に内容をきちんと理解していてまとめられる」というのは、まったくの別物なのです。だからこそ、意識して要約する訓練を重ねていくことが大切です。説明作業を日々、怠らないということです。
要約しようとするときは、「一番大切なことは何か」を念頭に置くようにしましょう。「あれも言いたい、これも言いたい」となると、散漫になり、内容がまとまらなくなってしまいます。まず核となる部分を見極め、そのうえで肉付けをしていくのです。これは会話をするときにも重要です。最初に結論ありき、といった話し方をすることで、話の方向があっちこっちにブレるのを防ぐことができます。 何らかの目的を持って読書をする場合は、章単位でじっくり読むことをおすすめします。速読できるのが格好いいと思われる風潮がありますが、一冊全体を素早く通読できることが善というわけではありません。