復興の象徴へ 鏡映の一大パノラマ 七尾・青林寺 能登半島地震1年
庭園を照らすライトのスイッチを入れると、あまりの美しさに息をのんだ。紅葉した木々が、室内に置かれた座卓の天板に鏡像となって一幅の絵のように浮かび上がった。 【写真】地震の影響で崩れた青林寺の階段。復旧作業が進められている 元日の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県七尾市の和倉温泉。発災からまもなく1年を迎えるが、多くの温泉宿がまだ復旧の途上で客足は遠のいたままだ。そんな温泉街の高台に青林寺は建つ。 寺の境内に保存されている国の有形文化財「御便殿(ごべんでん)」。明治42年、当時皇太子だった大正天皇が能登半島を訪れた際の休憩所として建てられたという。 竣工から1世紀以上がたった令和元年ごろ、御便殿の座卓に庭園の景色が反射し、きれいな写真が撮れると交流サイト(SNS)上で話題になり拝観者が急増した。特に新緑と紅葉の時期が人気で、元年度には国内外から1万人もの観光客が訪れた。 和倉温泉観光協会は、新たな観光の目玉にしようと、庭園のライトアップや境内での座禅体験などを企画。だが、コロナ禍も落ち着き温泉街ににぎわいが戻り始めていたところで大地震に見舞われた。 青林寺も石造りの階段が崩れた。御便殿の一部が傾き、ライトアップ用の照明が壊れるなどした。今も安全のため一般の拝観は中止している。 「全国からの支援に感謝している。なんとか御便殿を直して、来年中には一般のお客さんに来てもらいたい」と、5代目住職の浜田晃瑞(こうずい)さん(81)は話す。 「能登あっての和倉温泉。和倉温泉あっての能登だ。笑顔が戻るように、みんなで復興したい」と力を込める。 少しずつ進めている御便殿の修復が終われば、鏡映しの絶景が今度は和倉温泉の復興を象徴する一枚となって再びSNSをにぎわすだろう。 (写真報道局 桐原正道)