決断 視点 人材力 大阪・総がかりベンチャー支援の強み
決断 視点 人材力 大阪・総がかりベンチャー支援の強み 撮影:岡村雅之
ベンチャー企業は次世代の旗手と期待を浴びる半面、多産多死型の過酷な創業環境にさらされ、一人前に育つまでに市場からの退場を余儀なくされるケースが少なくない。そこで、大阪市は将来性の高いベンチャー企業を選定し、事業展開を総合的に支援して成長を加速させる「OIHシードアクセラレーションプログラム」を導入し、創業期ベンチャー支援に力を注ぐ。選び抜いた期待の星を、多分野のコーチ集団が熱く厳しく鍛え上げる特訓型総がかり支援だ。起業家がもっとも強く学んだものは何か。決断、視野、人材力。3社の創業トップに聞いたところ、帰ってきた回答は三者三様だった。 【拡大写真と動画】家庭教師役が起業家を熱烈指導 大阪市が新たなベンチャー支援策
豊富な経験が正しい決断へ導く
話を聞いた起業家は、SPLYZA(静岡県浜松市)の土井寛之さん、レポハピ(大阪市)の原武嗣さん、宙オリエンタル(滋賀県草津市)の梶原裕美さん。いずれも第2期同プログラムに採択された10社のうちの3社の創業トップだ。プログラムを終えて臨んだ成果発表会の会場で、プログラムの手応えを振り返ってもらった。 同プログラムは数か月間、ベンチャーキャピタルや先輩起業家、大手企業の新規事業担当者などがメンター(指導者)役を務め、新鋭経営陣たちを徹底的に鍛え抜く。指導方針をもとに練り直した事業計画が高い評価を受けると、公的機関やベンチャーキャピタル、金融機関などからの投融資で、不足しがちな事業資金を調達できる可能性が広がってくる。 スポーツチームを強くする動画分析共有アプリ「Spoch」(スポック)を開発したSPLYZAは、プロプラムを受けて順調にユーザーの獲得に成功した。土井社長は、10社ほどのベンキャーキャピタルの担当者から、2日間でそれぞれ1時間ずつ指導を受けた集中特訓に助けられたという。 「私たち起業家は多くの選択場面に直面しますが、必ず正しい経営判断ができるか心もとない。ベンチャーキャピタルのメンターさんは、豊富なベンチャー支援の経験を通じて、この業種であればどんな要素が成功と失敗の分岐点になるかを、熟知している。たとえば、ユーザーに対して、使い方を伝えないままに新しいハサミを渡していないか。メンターのおかげで、私たちがつらい試行錯誤を経てようやく辿り着ける正しい選択を、ショートカットしてすばやくつかんで決断できたことに感謝しています」(土井社長) 体験に基づくメンターの助言が、起業家の決断を後押しする。