<ラグビーW杯>エディジャパンに奇跡を呼ぶ「85年世代」
慶大時代は単身でのオーストラリア留学、パナソニック入り後は社会人アメリカンフットボールXリーグへの挑戦と、我が道を行く山田も、「常にチャレンジ。その気持ちに変わりはない」。代表入りは遅かったが、自分が世界で成功する方法論を絶えず考えてきた。その答えの1つが「当たり勝つ強さでも走り勝つスピードでも世界一にはなれない」というもの。サモア代表戦のトライに繋がった「相手に触られない動き」は、その思考の現れだ。 負けられないサモア戦を控えた9月28日の朝。選手同士のミーティングを、五郎丸が仕切った。その日の練習プランやサモア代表戦の見取り図を説明する内容だったらしいが、普段は他の仲間が仕切ることの多いものだった。五郎丸が自主的に先導役を買って出た姿から、堀江は内なる「向上心」のようなものを垣間見た。 「いつもはやらないようなところを、しかも、あれだけすんなりと…。ああいうのは、自分からやらなあかんと思っているからこそできると思うんです」 現チームは本番直前、急速に成長した。特に、ボール保持者やサポートプレーの技術を格段に向上させた。ランナーが相手の懐に低く潜り込んで、相手に触られないよう球を味方に見せる。防御側の様子を見つつ、素早く援護に入る…。堀江は「どうやったら上手くなれるのか、強くなれるのか…と(大会前の)試合のたびに修正した。人からやらされているのではなく、自分たちから考えることを止めなかった」とその背景を語っていた。 アスリートとしてのピークを迎えつつある30歳前後にして「向上心」を保つ「85年世代」は、そんな「どうやったら上手くなれるのか」を希求するチームの象徴でもあろう。五郎丸が「我々はチャレンジャー」と言い続ける一方、堀江はジャパンの同級生たちをこう捉える。 「皆、ラグビーが好きなんじゃないですか。結局は、そこだと思いますよ」 (文責・向風見也/ラグビーライター)