「無観客ならやりたくない」異色のアスリートが語る東京オリンピックに出場する苦悩
ハンドボールの魅力を知らず “マイナー”と認識されているのが一番悔しい
ハンドボールという競技は、日本ではまだまだ“マイナースポーツ”の域を脱していない。高い人気を誇るフランスのトップリーグでプレーしてきた土井レミイ杏利の目に、日本ハンドボール界の現状はどう映っているのか―― ――ハンドボール人気の高いフランスと日本の違いは? 野球で言えばプロ野球と草野球くらいの差があると思います。(2019年に)初めて日本の実業団チームでプレーしたときには結構ショックを受けました。フランスにいたころは黙っていてもお客さんが来てくれるので、ハンドボールのことだけを考えればよかったんです。でも、日本ではどうすればお客さんが集まるのか、どうすれば競技の人気が高まるのかを考えなければいけない。ただ、僕が帰国した時点ではそれを本気で変えようとしている人は一人もいなかった。なので、自分でやろうと決心したんです。 ――日本でハンドボールが決してメジャーではない状況について みんながハンドボールはマイナーだという認識を持っているのは事実です。でも一番悔しいのは、ハンドボールがどういう競技かを知った上でそういう認識を持っているわけではないということ。僕はハンドボールはとても魅力的なスポーツだと思っています。でも、日本ではほとんどの人にそこを知ってもらう前の段階で「マイナー」というレッテルを貼られている。そこは本当に悔しいですね。だからこそまずは「知ってもらいたい」という思いで活動しています。 ――東京オリンピックは無観客開催の可能性もありますが、改めてアスリートにとって応援してもらうことの大切さとは? ひとりで成し遂げられることなんて何もないですからね。たとえば何かを乗りこえるにしても、それが達成できた「自分自身」を築き上げてきたのはそれまでの環境だったり、いろんな人との関わりだったりするわけじゃないですか。それがなければ何もやれないし、何も成し遂げることなんてできない。 試合でいえば、その場で声を張って応援してくださる人の後押しって選手にとってはすごくて……。僕もこれまで何度も「今日は応援してくれる人のおかげで勝てたな」という経験を何度もしています。僕にとっては彼ら(応援してくれる人)がいてはじめて、ひとつのチームがそろうという認識なんです。だから無観客でやるというのはチームメイトが全員そろっていないのに試合をやる、という感覚なんです。応援してくれるみなさんがいてこそ、喜びや悲しみが共有できる。そこがスポーツにとっての大きな価値だと思うんです。 TikTokも自分で編集してアイデアを出してやっていますけど、それをフォローしてくれる人がいるからこそ注目されている。そういう意味では、それも自分だけの力ではないんです。だからファンの皆さんはすごく大事ですし、僕は彼らがいないのであれば、試合はあんまりやりたくないというか……。アスリートとしてこんなこと言っちゃいけないんでしょうけど……(苦笑)、でも、それくらいファンの人たちの存在は大切なんだと伝えたいんです。