鍵山優真は男子フィギュアスケート「マリニン1強時代」を止められるか NHK杯で残った課題とは
【ケアや食事も気遣い万全のコンディション】 NHK杯がGPシリーズ初戦となった鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)。合計得点を今季世界2位の300.09点にして連覇を決めたが、その表情は冷静だった。 <新着・写真>鍵山優真、坂本花織、りくりゅう...2024NHK杯フォトギャラリー 9月のロンバルディア杯では、ショートプログラム(SP)、フリーともにわずかなミスが出て合計291.54点。今季世界最高の312.55点を出したイリア・マリニン(アメリカ)に次ぐ2位だった。10月にはフリーだけで競われる西日本学生選手権で優勝したが、冒頭の4回転フリップのミスもあり181.22点にとどまっていた。 鍵山の今季のGPシリーズは、NHK杯、フィンランド杯の2週続けての連戦という厳しいスケジュールだが、しっかり準備ができていた。 NHK杯競技前日の11月7日の公式練習後、鍵山はこう話した。 「前の2戦(ロンバルディア杯と西日本学生選手権)は、練習を頑張っていたつもりだったけど、まだそこにはちょっと穴があったというか。結果が残せないというのは練習が足りないからだと思うので。 足りない部分を補うために4回転フリップや後半の3回転フリップ+3回転ループなどのジャンプをしっかりと意識し、何回も曲かけで跳んでイメージをつくる練習を積んできました」 また、体調に関しては「今年は日々の練習後のケアや毎回の食事などのスケート以外の生活ですごく体調を気にしながらやっているので、コンディションのいい状態で試合に臨めています」と自信をのぞかせていた。 その日の公式練習でも動きに力感があり、曲かけのSPはノーミス。終盤には「今後に向けて練習しているとアピールするために」と、4回転ルッツに挑戦してきれいに決めていた。
【ミスがありながらも300点超え】 8日のSPは、集中しきった滑りでジャンプも余裕を持って跳ぶノーミスの演技。マリニンの今季世界最高に1.55点差まで迫る105.70点を獲得して、目標の300点超えへの手応えを得ていた。 翌9日、朝の公式練習では違和感があったという。「ショートがノーミスだったのでフリーも頑張らなきゃという思いが強くなりすぎて、焦りが出て調整がうまくいかなかった部分もあり、少し感覚のズレを感じました」。それでも一度ホテルに戻ってから自信を取り戻したという。 フリー本番、最初の4回転フリップは回転不足で転倒というスタートになってしまったが、即座に気持ちを入れ替え、落ち着きを取り戻す。4回転サルコウや4回転トーループからの連続ジャンプ、トリプルアクセルからの3連続ジャンプを、余裕をもって決めた。さらに、後半に入ってすぐの4回転トーループは着氷でよろけて減点となったものの、ステップシークエンスはキレと気迫を見せる滑りでGOE加点もジャッジ全員が4~5点をつけた。 「テンポの速い曲のなかで、ステップをしっかり踏めたらすごく楽しいんだろうなというイメージは持っていました。お客さんがすごくいいリズムで手拍子してくださったのでそれに助けられ、背中を押してもらって気持ちのいい滑りができました」 結果はミスが影響して194.39点と目標の200点には届かなかったが、合計は300.19点。 「フリップ自体は調子がよかったので失敗してしまって悔しかったですが、それ以外の立て直しの部分ですごく気持ちが強く入った。そういうところは成長した部分なのかなと思います。やっぱりGPファイナルを狙うなかでは最後まで諦めてはいけないという思いもあったので、それで強く気持ちを保てたのではないかと思います」 そう話し、鍵山は安堵の表情を見せた。 「4回転フリップをミスしたからというわけではないけど、ジャンプ以外のスケーティングやスピンも、小さな点数ではあるけど積み重なって大きな点数につながっていくので、しっかり丁寧にやることを最初から最後まで気をつけました。 体力のキツさは普段の練習と同じくらいだけど、試合では緊張感や不安感も残るのでそこがちょっと違う部分。最後のスピン2つはレベル3に落としたので、そこをしっかりと直していければもっと点数を伸ばしていける。次は頑張りたいと思います」