ウインターカップを経験した洪有純と大角地黎が韓国の地で新たな挑戦
スピードが自慢の大角地黎はチームで生かせる武器を模索中
もう一人、洪と同じ新人ドラフトでWKBL入りを果たしたのがKBスターズ(8位指名)の大角地黎(おおかくち・れいり)※だ。新人ドラフトは韓国籍選手が対象だが、両親、祖父母のどちらかが(過去ないし現在で)韓国籍を保有していればエントリーできるため、韓国人の母を持つ大角地は韓国バスケットの世界へと足を踏み入れた。 ※WKBLでの登録名はイ・ヨミョンだが、ここでは大角地で表記する 大角地は、今大会も優勝候補の一角である岐阜女子高校(岐阜県)の出身。高校3年生の冬にはスターターとして決勝の舞台に立ち、桜花学園高校(愛知県)に競り負けはしたものの40分間フル出場。準決勝では24得点を挙げるなど銀メダル獲得に大きく貢献した。 高校卒業後は松蔭大学に進んだが、途中でバスケットから離れることに。しかし、バスケットへの未練が残っていたころ、「たまたまウインターカップでの私のプレーを見て、私がハーフだということを知った韓国の方が連絡をくれた」と、新人ドラフトにエントリーできる資格があることを知る。それから自身でもWKBLについて調べ、「これは私にしかできないこと、ほかの選手にはない特別な機会」と感じ、挑戦に踏み切った。大学4年次には大学の交換留学生として1年間、語学習得にも励み、WKBL入りに向けた準備を進めていった。 「日本と韓国との違いで感じるのは、韓国はパワープレーというか、フィジカルがすごく強いこと。逆に日本のようなスピードバスケットはそこまで見られないなと感じるので、スピードゲームに持っていけるように、そこから良い流れを作っていけるようなプレーをしていきたいなと思っています」と、抱負を語る。 ケガなども含めて約3年間のブランクがあることから、シーズンの開幕当初はベンチを温めていたが、中盤からは徐々にコートに立つことも増え、12月13日時点で5試合に出場。また、12月17日~20日の期間で行われたフューチャーズリーグ(若手選手が対象)では全3試合に出場し、優勝を経験した。 KBにはアジアクォーター制度で永田萌絵、志田萌の2人がいるが、「上手で日本語も通じる先輩が2人もいるし、(志田)萌ちゃんはガードで同じポジション。日本のプロでもやっていたし、アメリカの経験(大学でプレー)もあるので、そういう技術的なことも同じのコートで見られるのは、すごく刺激をもらいます」と、言う。 今はまだ自身の強みについて「研究中」という大角地。「今のチームカラーで自分が生かせることが何かをまだ発見できてないと思うので、それを少しずつ見付けていけたらいいなと思います」と、そこに焦りはない。高校時代、3年生の夏はバックアップメンバーだったが、努力を重ねて冬にスターターの座を射止めた。今もまた、あの時と変わらず、大角地はチームの勝利のため、そして自身のレベルアップのために研鑽を磨いているところだ。 12月23日より、日本では高校バスケット界の総決算となるウインターカップが始まる。洪も大角地も経験した舞台だ。自身の渡韓のキッカケともなったウインターカップについて大角地は「将来の土台となるようなところだと思うので、頑張ってほしいです」と、後輩たちにエールを送った。 WKBLの世界で奮闘する洪と大角地。“日本バスケット”で育った2つの才能は、新天地で新たな花を咲かせようとしている。 文=田島早苗
BASKETBALL KING