優れたリーダーは知っている「どんな部下でも成長する4つの方法」とは?
上司・管理職のバイブルとして世界で1300万部を超えるベストセラーとなった名著『1分間マネジャー』を送り出したケン・ブランチャードらが、リーダーシップについて著した『1分間リーダーシップ』。そして、その改訂新版が本記事で紹介する『新1分間リーダーシップ』だ。過去40年間にフォーチュン1000の優良企業のほとんどで、また世界中の急成長する新興企業で伝授されてきたリーダーシップのモデルとは?(文/上阪徹) 【この記事の画像を見る】 ● どんな部下にも通用するリーダーシップとは? リーダーは、どんなマネジメントを行うべきなのか。実践的でわかりやすく、使いやすいアプローチはないものか……。リーダーの誰もが求める新しいリーダーシップの考え方を平易に説いたのが、『新1分間リーダーシップ どんな部下にも通用する4つの方法』だ。 本書は共著の形になっているが、著者の一人は、ケン・ブランチャード。65冊の共著書があり、世界の47言語に翻訳され、合わせて2800万部超の売り上げがあるという世界で最も影響力のあるリーダーシップの権威である。 そして本書に登場するのが、世界で1300万部を超えるベストセラーとなった彼の名著『1分間マネジャー 部下を成長させる3つの秘訣』の主人公「1分間マネジャー」。その「1分間マネジャー」から教えを受け、働き過ぎの起業家が新しいリーダーへと成長、多様なチームメンバーの力を最大限に引き出す方法を学んでいく姿を、ストーリー仕立てで描いていく。 ● 相手や状況によって、違ったやり方をする 「1分間マネジャー」の部下の一人は、話を聞きに来た起業家にこう語った。 1分間マネジャーは、相手がだれか、状況がどうであるかによって、スタイルを変えるのです(P.26) それこそが「状況対応型リーダー」だった。違った人には、違ったやり方をする。そんな「1分間マネジャー」のリーダーシップに起業家は驚く。 また、この「1分間マネジャー」の部下が、相手によって扱いを変えることに対して、まるで抵抗がなさそうなことにも起業家は驚いた。 ● 日々のコーチングを怠るリーダーが少なくない どうすれば、「1分間マネジャー」のようなリーダーになれるのか。そう問われた「1分間マネジャー」は、3つのスキルについて語った。 「まず明確な目標を立てること。そしてそれぞれの目標ごとに相手の発達レベルを診断すること(中略) 3つ目に、相手が何を必要としているかによって、さまざまなリーダーシップスタイルを使い分けることです。短く言うと“目標設定・診断・マッチング”です」(P.29) 目標設定にあたっては、パフォーマンス管理に3つの側面がある、と「1分間マネジャー」の部下は起業家に語った。パフォーマンス・プランニング、日々のコーチング、パフォーマンス評価だ。 そして、多くの会社が決まって積み残す課題が、日々のコーチングだと話を進める。目標を設定しっぱなしで、日々のコーチングを怠るリーダーが少なくないのだ。日々のコーチングがきちんとなされていないと、残念なリーダーシップに直結してしまう。 部下はこう続けた。 「『ほったらかしてバッサリ』式リーダーシップです」(中略) 「1分間マネジャーは、最近『かもめマネジメント』と呼んでいます。かもめマネジャーは目標設定を終えると部下をほったらかしにして、ミスをするとすぐに飛んできてぎゃあぎゃあと騒ぎ立て、誰彼かまわずしかりつけたあげく、さっと飛んで行ってしまうのです」(P.41) では、コーチングは何から始めればいいのか。それこそが、診断だった。部下のその目標における発達レベルを診断するということだ。 起業家は新たに紹介されたITグループのリーダーから、診断の方法を学ぶ。発達レベルを見極めるには、意欲(コミットメント)と技能(コンピテンス)の二つの要素に注目する必要があった。 そして意欲と技能の組み合わせには、4種類があった。 ● 「指示型」「コーチ型」「支援型」「委任型」 D1とは、技能は低いが意欲は高い「意欲満々な初心者」。やる気に溢れ、学習意欲も旺盛だが、経験が足りない。しかし、学びが進むと、すぐにD2へと移っていく。 D2は、技能が中くらいになったものの、意欲は低い「期待がはずれた学習者」。知識やスキルは多少とも身に付いたけれど、思った以上に学ぶことが多いとわかり、期待したほどの進歩が感じられなくなる。 ITリーダーの女性は語る。 「D2になるといらいらしたり、途中で投げ出したくなったりすることもあります」(中略) 「でも、“何を”、“いつ”、“どうやる”といった方法論だけでなく、その背後の“どうして”を知りたくなるはずです。自分は本当に進歩しているのか、全体像をとらえたくなるのです。そして、だれかに背中を押してもらいたいという気持ちも」(P.49-50) そしてD3は、技能は高くなったが、意欲が不安定な「慎重になりがちな貢献者」。その仕事で一定の実力を発揮し、経験もあるが、独力で仕事をこなせるかどうか少し心配している。自分に厳しく、不安を抱えている。目標や仕事に飽きて、意欲を失っている場合もある。 D4は「自立した達成者」。技能も意欲も十分に高くなる。 これが、その目標における相手の発達レベルの診断だ。相手の発達レベルが異なれば、対応の仕方も変えたほうがいいに決まっている。 起業家の女性は、リーダーシップは2種類しかないと思い込んでいた。指示型と支援型だ。ところが、そうではなかったのである。 「1分間マネジャー」はこう語った。 「そのことではみんな驚くようです。だれもがリーダーシップスタイルは2種類しかないと思い込み、どちらか一方の側に立ってお互いをけなし合ってきました。支援型のマネジャーは考えが甘すぎる、軟弱だといって非難されます。こちらは部下に協力的すぎるし、逆に指示型マネジャーは管理しすぎと言われるのです。しかし私の長年の持論は、一方の極に凝り固まるマネジャーは半人前のマネジャーだということです」(P.60-61) 一人前のマネジャーとは、発達レベルの診断に合わせ、4種類のリーダーシップスタイルをマッチングして使い分けられるリーダーなのだ。 それが「指示型」「コーチ型」「支援型」「委任型」。それぞれD1からD4までに対応したリーダーシップスタイルだ。S1からS4と名付けられ、「SLⅡリーダーシップスタイル」と銘打たれていた。 求められるのは、最高のリーダーシップを作り出すことではない。 リーダーシップスタイルを、メンバーの発達レベルに合わせること。「1分間マネジャー」は、S1からS4まで、それぞれふさわしい状況を解説しながら、起業家の学びを深めていった。 上阪 徹(うえさか・とおる) ブックライター 1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『ブランディングという力 パナソニックななぜ認知度をV字回復できたのか』(プレジデント社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)、『10倍速く書ける 超スピード文章術』(ダイヤモンド社)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。
書籍オンライン編集部